Perspective
作物:作物ゲノミクス研究の進歩と圃場への応用
Nature Genetics 53, 5 doi: 10.1038/s41588-021-00866-3
作物ゲノミクスは、世界の食料安全保障を確保するために科学研究を行う上で、カギとなる分野の1つである。最初の植物ゲノムであるシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のゲノム塩基配列が発表されて20年がたつ。シロイヌナズナに続いてすぐにイネの概要ゲノム塩基配列も解読された。以来、100種類以上の作物のゲノム塩基配列が解読され、今や植物のゲノム研究はさまざまな分野へ拡大しており、新しい技術や方法の開発によって今後数年間は確実にさらなる進歩が見込まれる。作物ゲノム塩基配列の解読、遺伝子地図の作成、さまざまなレベルの生物学的データの取得における技術革新は今後も継続する可能性が高い。ゲノムやトランスクリプトームから、細胞、植物や微生物、昆虫へと、生命の複数の階層にまたがってゲノム規模の情報が統合され、このことが作物の生物学的機構の解明を進め、ひいては実験室の研究結果を圃場に応用するためのさらなる推進力となることが期待される。