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ゲノム編集:CRISPR–Cas9ゲノム編集のオンターゲット効果によるクロモトリプシス
Nature Genetics 53, 6 doi: 10.1038/s41588-021-00838-7
ゲノム編集は、遺伝病やがんの治療に役立つ可能性を秘めている。しかし、現行の最も実用的なアプローチはDNA二本鎖切断(DSB)の形成に依存しており、これは十分に解明されていない一連の染色体構造異常を生じさせる恐れがある。本研究では、モデル細胞を用いた実験、単一細胞全ゲノム塩基配列決定、および疾患関連細胞の疾患関連座位でのゲノム編集により、CRISPR–Cas9ゲノム編集の結果として、核の構造的異常である微小核および染色体橋が生じ、これがクロモトリプシス(染色体破砕)と呼ばれる変異プロセスを開始させることを実証した。クロモトリプシスは1本ないし数本の染色体に限定された大規模な染色体再編成であり、ヒトの先天性疾患やがんの原因となり得る。これらの結果は、CRISPR–Cas9によってオンターゲットに形成されたDSBのこれまで注目されていなかった影響として、クロモトリプシスが誘導され得ることを示している。ゲノム編集の臨床応用に当たっては、大規模な染色体再編成が起こり得ることを念頭において監視する必要がある。