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扁平上皮細胞がん:SOX2による食道扁平上皮がんエピゲノムの再プログラム化はADAR1依存性を促進する

Nature Genetics 53, 6 doi: 10.1038/s41588-021-00859-2

食道扁平上皮細胞がん(ESCC)では、染色体3qの頻発する増幅が見られ、その対象には転写因子SOX2が含まれている。SOX2は、ESCCにおけるがん遺伝子としての役割を持つだけでなく、食道扁平上皮の発生や、成体での食道前駆細胞の維持にも働く。今回我々は、正常組織と悪性組織でのSox2活性を比較するために、正常な食道からSox2誘発性扁平上皮細胞がんまでの表現型を示すように改変したマウス食道オルガノイドを開発し、正常組織からがんに進化するまでのSox2の結合と、エピジェネティックおよび転写の状況をマッピングした。発がん性Sox2は正常組織で見られる作用をおおむね維持しているが、p53p16の不活性化とSox2の過剰発現が組み合わさると、クロマチンリモデリングとSox2シストロームの変化が促進される。Klf5と共に、発がん性Sox2は新たな結合部位を獲得し、Stat3などのがん遺伝子の活性を亢進する。また、発がん性Sox2は内在性レトロウイルスを活性化して、二本鎖RNAの発現とRNA編集酵素ADAR1に対する依存性を誘導する。これらのデータから、ESCCにおけるSOX2の機能が示され、治療標的となり得る脆弱性が明らかになった。

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