Article

免疫:LINE1は非カノニカルな転写バリアントにスプライシングされて、T細胞の静止状態や疲弊を調節する

Nature Genetics 54, 2 doi: 10.1038/s41588-021-00989-7

ヒトT細胞の静止状態を維持するために、遺伝子発現がどのように制御されているのかはほとんど分かっていない。本論文では、LINE1(long interspersed nuclear element 1)を含む非カノニカルなスプライシングバリアントが、ナイーブCD4+ T細胞を静止状態にすることを示す。LINE1を含む転写産物は、T細胞活性化の際に発現上昇するCD4+ T細胞特異的な遺伝子に由来している。ナイーブCD4+ T細胞では、LINE1を含む転写産物は、転写因子IRF4によって制御され、ヌクレオリンによってクロマチンに保持される。これらの転写産物はそこでシスに作用し、ヒストンH3リシン36トリメチル化(H3K36me3)のレベルを低く抑え、遺伝子発現を停止させている。T細胞が活性化すると、スプライシング抑制因子PTBP1により、LINE1を含む転写産物の発現低下が誘導され、mTORC1を介した伸長因子GTF2F1により、LINE1を含む転写産物に対応するタンパク質コード遺伝子の発現が促進される。機能不全のT細胞、つまりin vitroで疲弊したT細胞あるいは腫瘍浸潤リンパ球(TIL)では、クロマチンにLINE1を含む転写産物が蓄積する。LINE1を含む転写産物を除去すると、TILのエフェクター機能が回復することは重要である。我々の研究は、T細胞の静止状態の維持を担うLINE1配列の役割を明らかにしており、LINE1を含む転写産物の量がT細胞のエフェクター機能や疲弊に重要であることを示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度