Article

前立腺がん:HOXB13は前立腺がんにおいて、HDAC3を介したエピジェネティックなリプログラミングによりde novoの脂質合成を抑制する

Nature Genetics 54, 5 doi: 10.1038/s41588-022-01045-8

ホメオドメイン転写因子であるHOXB13は、アンドロゲン受容体(AR)の活性とアンドロゲン依存性前立腺がん(PCa)の増殖の調節に重要である。しかし、AR非依存的な状況でのHOXB13の機能については明らかになっていない。今回我々は、HOXB13とヒストンデアセチラーゼHDAC3の相互作用について報告する。この相互作用は、早期発症型PCaと関連するHOXB13 G84E変異によって障害される。HOXB13は、AR非依存的にHDAC3を脂質合成エンハンサーに誘導し、ヒストン脱アセチル化を触媒し、脂肪酸合成酵素などの脂質生成調節因子を抑制する。ヒト組織の解析から、転移性の去勢抵抗性PCaの約30%では、HOXB13遺伝子が高メチル化され、その発現が低下していることが分かった。HOXB13の喪失あるいはG84E変異によってPCa細胞での脂質蓄積が起こり、その結果として、細胞の運動性と異種移植片の腫瘍転移が促進され、これは脂肪酸合成酵素を薬理学的に阻害することで軽減される。まとめると、HOXB13はHDAC3を誘導してde novoの脂質合成を抑制し、腫瘍転移を阻害する証拠が示され、脂質合成経路の阻害剤は、HOXB13の発現が低いPCaの治療に有用である可能性が明らかになった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度