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進化:洞窟魚の代謝適応の根底にあるシス調節変化のゲノムワイド解析
Nature Genetics 54, 5 doi: 10.1038/s41588-022-01049-4
シス調節の変化は適応進化の重要なドライバーである。しかしながら、生物の代謝適応へのシス調節の貢献はよく分かっていない。今回我々は、ユニークなモデル脊椎動物である洞窟魚(メキシカンテトラ)Astyanax mexicanusを用いて、代謝適応の根底をなす遺伝子調節ネットワークを明らかにした。洞窟魚は、栄養分の豊富な表層と栄養分の不足する洞窟の水域のそれぞれで異なる形態を持って生存している。我々は、洞窟魚の肝臓組織についてゲノムワイドなエピジェネティックプロファイルを作成し、特定された多くのシス調節配列(CRE)が遺伝的に異なっており、表層と洞窟の形態の間で相異なるクロマチンの特性を有していることを見いだした。一方で、独立に派生した洞窟集団の間では驚くほど類似した調節シグネチャーを保持していた。洞窟魚でのhpdb遺伝子におけるこのようなCREの1つは、レポーターアッセイでIRF2リプレッサーの結合を消失させ、エンハンサーを活性化するゲノム欠失を含んでいる。複数の独立した洞窟魚集団においてこの変異が選択されていることは、洞窟での適応におけるその重要性を示しており、食物の不足する洞窟での適応と色素喪失との間の進化的なトレードオフを探るための新たな分子的洞察をもたらす。