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アブラナ:セイヨウアブラナの近代育種における農業形質のゲノム選抜と遺伝的構造
Nature Genetics 54, 5 doi: 10.1038/s41588-022-01055-6
セイヨウアブラナ(Brassica napus L.)は世界的に重要な油糧作物である。その環境適応性、収量、および品質はここ数十年間で大きく向上したが、その向上をもたらした育種選抜の根底にあるゲノム的背景については明らかになっていない。そこで我々は、多様なセイヨウアブラナの418アクセッションについての全ゲノムリシークエンシングに基づき、セイヨウアブラナの育種過程の包括的なゲノム評価を行った。その結果、環境適応や農業形質の選択に関するゲノム基盤が明らかになった。ゲノムワイド関連解析の結果、56の農業的に重要な形質(植物構造や収量などの形質)の候補原因遺伝子の近傍関連座位を628明らかにした。また、種子重量に影響するリボソームリサイクリング因子遺伝子(BnRRF)など、品種改良に伴って対立遺伝子頻度分布に有意な偏りを生じさせたと考えられる農業形質の候補遺伝子群において、非同義変異が生じていることを見いだした。本研究は、セイヨウアブラナの品種改良のゲノム基盤への洞察を与えるとともに、今後のゲノム育種に役立つ貴重なゲノム情報資源を提供するものである。