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膵臓がん:膵臓がんの空間的な単一核トランスクリプトームプロファイリングにより明らかになったネオアジュバント療法に関連する多細胞レベルの動態

Nature Genetics 54, 8 doi: 10.1038/s41588-022-01134-8

膵管腺がん(PDAC)は致死性の高い難治性のがんである。膵臓がんの分子層別化はまだ十分進んでいないので、臨床管理や治療法の開発のために情報を提供することはできていない。今回我々は、43の原発性PDAC腫瘍標本(ネオアジュバント療法を受けた症例、あるいは治療経験のない症例のどちらか)について、単一核RNA塩基配列決定と全トランスクリプトーム・デジタル空間プロファイリング(DSP)を行い、PDACを構成する細胞サブタイプと空間細胞コミュニティーに関する分子レベルでの全体像を高解像度で構築した。その結果、悪性細胞と繊維芽細胞の両方で頻発する発現プログラムが明らかになった。この中には、化学療法や放射線療法後に濃縮が見られる、新たに見つかった神経様前駆悪性細胞プログラムがあり、これは独立したコホートでの予後不良と関連していた。空間プロファイルと細胞プロファイルを統合したところ、悪性細胞、繊維芽細胞、免疫細胞のサブタイプが異なる組み合わせで構成された3種類の多細胞コミュニティー(従来型、扁平上皮様–類基底細胞型、治療濃縮型)が明らかになった。本研究により分子および細胞の分類が改良されたので、この分類を臨床試験における層別化の基盤として用いることができ、また、特定の細胞表現型や多細胞相互作用を治療標的とする際のロードマップとしても利用できるだろう。

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