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乾燥耐性:卓越した乾燥耐性をもつトウモロコシ遺伝資源のゲノムアセンブルと遺伝学的分析
Nature Genetics 55, 3 doi: 10.1038/s41588-023-01297-y
気候変動の中で、干ばつは作物生産に影響を与える最も大きい制限要因の1つである。主要な穀物であるトウモロコシは、水分不足の影響を非常に大きく受けやすく、深刻な収量不足がもたらされる。従って、乾燥耐性の遺伝資源を発見し、それを活用することは、トウモロコシ形質を遺伝的に改良する上で極めて重要である。今回我々は、卓越した乾燥耐性を示す遺伝型CIMBL55の高品質ゲノムアセンブルについて報告する。ゲノムと遺伝子の変異解析によって、これまでに同定された108の乾燥耐性候補遺伝子がCIMBL55に含まれているが、そのうちに65の有用なアレルが含まれていることが分かった。これらのアレルは、優れた乾燥耐性の遺伝的な基礎をなすと考えられる。特に、レティキュロン様タンパク質をコードするZmRtn16が、液胞型H+-ATPaseの活性を促進することにより乾燥耐性に貢献していることが見いだされた。このことは、トウモロコシの乾燥耐性に対する液胞のプロトンポンプの役割について着目させるものである。CIMBL55ゲノムの構築は、植物の乾燥耐性の遺伝学的分析と改良に対する基盤となる知識を提供し、世界的な食料安全保障の支援に貢献するものである。