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COVID-19:mSWI/SNF複合体活性の薬理学的破壊はSARS-CoV-2感染を妨げる

Nature Genetics 55, 3 doi: 10.1038/s41588-023-01307-z

コロナウイルス感染の宿主要因を特定することは、ウイルスの病原性機構に関する情報をもたらし、また、新しい薬剤標的を提供することができる。本論文では、mSWI/SNF(mammalian SWItch/Sucrose Non-Fermentable)クロマチンリモデリング複合体、特にcBAF(canonical BRG1/BRM-associated factor)複合体が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染を促進すること、そして宿主指向性治療標的であることを実証する。SMARCA4の触媒活性は、ACE2座位でのmSWI/SNFによるクロマチンへの接近性、ACE2の発現、ウイルスの感受性に必要である。転写因子HNF1A/Bは、mSWI/SNF複合体と相互作用し、mSWI/SNF複合体をACE2エンハンサーに誘導する。このエンハンサーにはHNF1Aモチーフが高度に密集している。特に、mSWI/SNFのATPアーゼの阻害剤ないしは分解剤である小分子が、アンギオテンシン変換酵素2(ACE2)の発現を失わせ、また、3つの細胞株と気道上皮細胞を含む3種類のヒト初代培養細胞においてSARS-CoV-2変異株およびレムデシビル抵抗性ウイルスに対する抵抗性を最大10万分の1に低下させた。これらのデータは、SARS-CoV-2感受性を付与するmSWI/SNF複合体活性の役割を明らかにし、また、新興コロナウイルスや薬剤耐性変異株と戦うための広域作用型の抗ウイルス薬の有望なクラスを示している。

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