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発生:MLL3/MLL4メチルトランスフェラーゼ活性は初期胚発生と胚性幹細胞の分化を細胞系譜選択的に制御する
Nature Genetics 55, 4 doi: 10.1038/s41588-023-01356-4
H3K4me1メチルトランスフェラーゼであるMLL3(KMT2C)およびMLL4(KMT2D)は、エンハンサーの活性化、細胞分化、発生に必須である。しかし、これらの過程において、MLL3/4の酵素活性がどんな役割を持つか、また、エンハンサーのH3K4me1がMLL3/4を介してどんな働きをしているかは分かっていない。本論文では、マウスにおいてMLL3およびMLL4の両方の酵素活性を構成的に除去すると、原腸形成の開始が妨げられ、初期胚致死がもたらされることを報告する。しかし、胚の細胞系譜選択的に(胚体外の細胞系譜は除く)MLL3/4酵素活性を除去すると、原腸形成はほとんど無傷であった。これと一致して、MLL3/4酵素活性を欠損する胚性幹細胞(ESC)は、胚の三胚葉が分化される方向に発生が進むが、胚体外内胚葉(ExEn)および栄養外胚葉への分化には異常を示した。ExEnへ分化できないことは、細胞系譜を決定する転写因子GATA6のエンハンサーへの結合が著しく減少したことに起因する可能性がある。さらに、MLL3/4に触媒されるH3K4me1は、ESC分化の過程でのエンハンサー活性化にはほとんど不要であることが分かった。総合的に我々の知見は、初期胚発生およびESC分化におけるMLL3/4メチルトランスフェラーゼ活性の役割は細胞系譜選択的であり、この働きはエンハンサー活性化に依存しないことを示唆している。