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がん遺伝学:エンハンサーでのMYC活性はエピジェネティックスイッチを介して予後に関わる転写プログラムを作動させる

Nature Genetics 56, 4 doi: 10.1038/s41588-024-01676-z

転写因子MYCは、ほとんどのがんで過剰発現しており、がんプログレッションのさまざまな特徴を引き起こす。MYCは活性なプロモーターに結合して、発がん性の転写を促進することが知られている。また、MYCが発がんレベルの量で発現したときには、遠位のエンハンサーにも侵入することが知られているが、このエンハンサー結合による遺伝子調節能力は低いと考えられている。本論文では、MYCはエンハンサー活性を直接調節して、患者の予後不良を予測するがんタイプ特異的な遺伝子プログラムを促進することを示す。MYCは、RNAポリメラーゼII(RNAPII)の一時停止と解除を調節するのではなく、プロモーターにおける場合と同様に、RNAPIIを誘導してエンハンサーRNAの転写を誘導する。この過程は、MYCによって誘導されるH3K9の脱メチル化と、GCN5によるアセチル化を介したものであり、BRD4のブロモドメインを介してエンハンサー特異的なBRD4誘導を引き起こし、RNAPIIの誘導を促す。従って、MYCは、エンハンサー特異的なエピジェネティックスイッチの誘導を介して、予後に関わるがんタイプ特異的プログラムを促すと考えられ、これはBETやGCN5の阻害剤による標的化が可能である。

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