Communications Chemistry に掲載された一次研究論文(Articles および Letters)について、その概要を日本語で紹介しています。
Nuclear-driven production of renewable fuel additives from waste organics
doi: 10.1038/s42004-021-00572-5
有用化学品の持続可能な生産に向けた現在の傾向は、核エネルギーと化学工業の組み合わせにある。本論文では、γ放射線を用いてグリセロール(バイオ精製所の廃棄物)を高価値化合物ソルケタールに変換することが提案されている。
A boron-transfer mechanism mediating the thermally induced revival of frustrated carbene–borane pairs from their shelf-stable adducts
doi: 10.1038/s42004-021-00576-1
フラストレイテッド・ルイス対は古典的なスイス付加体から熱的に再生できるが、その再生機構はよくわかっていない。本論文では、実験と理論を組み合わせた研究によって、ホウ素ジャンピングと動的コンフォメーション異性化を介する経路が支持されている。
On the forbidden graphene’s ZO (out-of-plane optic) phononic band-analog vibrational modes in fullerenes
doi: 10.1038/s42004-021-00540-z
フラーレンの振動特性は、特に分子サイズの効果に関して、完全には理解されていない。本論文では、フラーレンの振動状態密度は、グラフェンの振動状態密度に滑らかに収束し、フラーレンファミリーの5角形面に起因する周波数圧縮された半径方向の光学振動の存在によってのみ妨げられることが密度汎関数理論によって示されている。
A multicolor and ratiometric fluorescent sensing platform for metal ions based on arene–metal-ion contact
doi: 10.1038/s42004-021-00541-y
蛍光プローブは高い感度で金属イオンを検出できるが、その設計は、概して限られた数のセンシング機構に頼っている。本論文では、アレーン–金属イオンコンタクトをセンシング機構として用いることによって、幅広い波長範囲にわたって金属イオンのレシオメトリック検出を可能にしている。
High sensitivity analysis of nanogram quantities of glycosaminoglycans using ToF-SIMS
doi: 10.1038/s42004-021-00506-1
グリコサミノグリカンは、重要な種類の炭水化物であるが、分析上の大きな課題がある。本論文では、ToF-SIMSと多変量解析を併用することで、さまざまな動物に由来するヘパリン試料が0.001 wt%という感度で識別されるなど、6種類のグリコサミノグリカンが識別されている。
The carbonization of aromatic molecules with three-dimensional structures affords carbon materials with controlled pore sizes at the Ångstrom-level
doi: 10.1038/s42004-021-00515-0
多孔性材料は、触媒反応、電気化学、吸着剤などに広く用いられているが、細孔サイズの制御が合成上の課題であり続けている。本論文では、カーボン原料の3D分子構造によって、生成するカーボン材料の細孔サイズをオングストロームレベルで制御できることが示されている。
Pyrazinacenes exhibit on-surface oxidation-state-dependent conformational and self-assembly behaviours
doi: 10.1038/s42004-021-00470-w
アセンは、特徴的な電子的・光学的特性を示す有望な有機材料種である。本論文では、デカアザペンタセンとオクタアザテトラセンが合成され、異なる酸化状態におけるそれらの自己集合挙動の解析が行われている。
Thioester synthesis through geoelectrochemical CO2 fixation on Ni sulfides
doi: 10.1038/s42004-021-00475-5
チオエステルは、原始代謝における主要中間体であると示唆されることが多いが、チオエステルへの前生物的CO2固定経路はまだよくわかっていない。本論文では、硫化ニッケルが、現実的な地球電位によって部分的にNi(0)に還元され、CO2からCOへの電気的還元とそれに続くCOとメタンチオールの反応を経てチオエステル(S-メチルチオアセテート)形成を促進することが示されている。
Microscopic origins of conductivity in molten salts unraveled by computer simulations
doi: 10.1038/s42004-020-00446-2
溶融塩電解質は、エネルギー貯蔵やエネルギー変換に広く用いられているが、伝導傾向の理解はまだ不完全である。本論文では、コンピューターによるアプローチを用いてイオンの電気移動度、局所構造、カイネティクスが決定され、ハロゲン化リチウム溶融塩における伝導の起源が解明されている。
Elemental composition control of gold-titania nanocomposites by site-specific mineralization using artificial peptides and DNA
doi: 10.1038/s42004-020-00440-8
バイオミネラリゼーションは、無機化合物の結晶構造、サイズ、モルフォロジーの制御を可能にするが、ランダム組成の析出によって複合ナノ構造体の構築が妨げられている。本論文では、DNAと結合した2種の無機析出ペプチドを通して金-チタニアナノコンポジット光触媒の元素組成が制御されている。
Open questions on aromaticity in organometallics
doi: 10.1038/s42004-020-00419-5
炭化水素のsp2-混成炭素原子は、一般的に、電子1個しか芳香族性に寄与しないが、有機金属化合物における金属は、共役への関与に利用できるd軌道電子またはf軌道電子をより多く持っているため、電子の計数や芳香族性の分析が複雑になっている。本論文では著者たちが、有機金属化合物における芳香族性の理解に向けての課題に関してコメントするとともに、まだ解決されていないいくつかの問題を概説している。
Non-aqueous, zwitterionic solvent as an alternative for dimethyl sulfoxide in the life sciences
doi: 10.1038/s42004-020-00409-7
ジメチルスルホキシドはよく用いられる溶媒であるが、浸透性と細胞への影響に問題がある。本論文では、代わりの溶媒である双性型イオン液体、ならびにその細胞膜親和性、凍結保護特性、薬剤溶解能が報告されている。
Size dependency of gold nanoparticles interacting with model membranes
doi: 10.1038/s42004-020-00377-y
クエン酸で安定化させた金ナノ粒子は、さまざまな用途に使用されているが、脂質膜との相互作用が十分理解されていない。本論文では、ナノ粒子のサイズがPOPCベシクルやDOPCベシクルとの相互作用に及ぼす影響が、実験的に検討されている。
Zeolite-supported ultra-small nickel as catalyst for selective oxidation of methane to syngas
doi: 10.1038/s42004-020-00375-0
メタンから合成ガスへの触媒的酸化は重要なプロセスであるが、効率的かつ安定な触媒が依然として要求されている。本論文では、メタンを合成ガスに変換する選択的かつ効率的な触媒として働く1.6 nmの超微小酸化ニッケルナノ粒子が、ゼオライト表面にニッケルを分散させることによって得られている。
Probing the temperature of supported platinum nanoparticles under microwave irradiation by in situ and operando XAFS
doi: 10.1038/s42004-020-0333-y
マイクロ波照射は、固体触媒の直接的・集中的な加熱を可能にするが、温度制御が大きな課題となっている。本論文では、in situ XAFSおよびoperando XANES分光法によって、γ-Al2O3担体およびSiO2担体上の白金ナノ粒子の局所温度が明らかになっている。
The phenine concept delivers a nitrogen-doped nanotube and evokes infinite possibilities
doi: 10.1038/s42004-020-00348-3
磯部らは、最近、sp2混成炭素原子の代わりに1,3,5-三置換ベンゼン系(フェナイン・ユニット)を基本構成要素として用いるフェナイン・コンセプトを提示した。今回彼らは、このコンセプトを窒素ドープ型フェナイン・ナノチューブの簡便合成に適用している。
Hyperpolarized water through dissolution dynamic nuclear polarization with UV-generated radicals
doi: 10.1038/s42004-020-0301-6
過分極水は、磁気共鳴画像法において金属含有造影剤に代わる魅力的な造影剤となるが、有効に持続する過分極水プロトンを生成することは困難である。本論文では、UVによって生成したラジカルを用いた溶解動的核分極を利用して、水の信号を大幅に増強させている。
Revealing the complexity of ionic liquid–protein interactions through a multi-technique investigation
doi: 10.1038/s42004-020-0302-5
イオン液体は生体触媒反応において溶媒として用いられるが、タンパク質構造とイオン液体がどのように相互作用するかは完全には理解されていない。本論文では、3種の一般的なイオン液体が緑色蛍光タンパク質の構造に与える影響が、一連の実験手法を用いて調べられており、単一の手法ではほとんど捉えられない複雑な関係が見いだされている。
Formation of thioglucoside single crystals by coherent molecular vibrational excitation using a 10-fs laser pulse
doi: 10.1038/s42004-020-0281-6
化合物の結晶化は、一般的に過飽和溶液から時間をかけて、あるいは溶融や昇華によって行われる。本論文では、10-fsレーザーパルスを用いて加熱せずにチオグルコシドの試料を気化させ、未飽和溶液から溶媒を含まない単結晶を形成する方法が示されている。
Hydrodynamic accumulation of small molecules and ions into cell-sized liposomes against a concentration gradient
doi: 10.1038/s42004-020-0277-2
初期地球上で仮説的原始細胞内にどのようにして分子が溜め込まれたのかは、まだわかっていない。本論文では、表面媒介機構を引き起こす流体力学的な流れの下で、細胞サイズのリポソーム内に小分子が非生物的に蓄積されるという証拠が自動マイクロ流体実験によって得られている。
Time-dependent vibrational sum-frequency generation spectroscopy of the air-water interface
doi: 10.1038/s42004-019-0220-6
振動和周波発生分光法は、空気-水界面における高速ダイナミクスを研究するための強力な手法となるが、スペクトルダイナミクスと分子ダイナミクスの関係付けは、計算コストが高くつく可能性がある。本論文では、界面系の時間依存性周波数分解SFGスペクトルを計算する単純な方法が報告されている。
An investigation of structural stability in protein-ligand complexes reveals the balance between order and disorder
doi: 10.1038/s42004-019-0205-5
タンパク質における構造安定性とリガンド結合の関係が議論の的になっている。本論文では、dynamic undocking (DUck)という計算手法によって、一連のタンパク質-リガンド複合体の構造ロバスト性が個々の水素結合と関係付けられている。
Functionalization of 2D materials for enhancing OER/ORR catalytic activity in Li–oxygen batteries
doi: 10.1038/s42004-019-0196-2
リチウム酸素電池は、過電圧印加に起因して劣化する傾向にある。本論文では、窒化チタンMXeneと炭化チタンMXeneの表面機能化が理論的に研究され、通常のグラフェン系触媒と比較すると、機能化によって過電圧が最高で80%低下し、ORRが60倍になることが示されている。
Optimal methodology for explicit solvation prediction of band edges of transition metal oxide photocatalysts
doi: 10.1038/s42004-019-0179-3
伝導バンド端と価電子バンド端のエネルギーは光触媒性能のカギとなるが、実験による測定値は一致しない。本論文では、第一原理密度汎関数理論を用いて、さまざまな遷移金属酸化物のバンド端の位置が予測されている。
Computational polymorph screening reveals late-appearing and poorly-soluble form of rotigotine
doi: 10.1038/s42004-019-0171-y
医薬品開発時に、多形を示す可能性のある系をスクリーニングすることが重要である。本論文では、コンピューターによる結晶構造予測解析によって、事前情報なしに、遅く現れる低溶解性多形体のロチゴチンを特定できることが実証されている。
Direct atomic identification of cation migration induced gradual cubic-to-hexagonal phase transition in Ge2Sb2Te5
doi: 10.1038/s42004-019-0114-7
相変化ランダム・アクセス・メモリーは、準安定な岩塩型構造から安定な六方晶構造への相転移に基づいているが、そうした相転移の詳細はまだよくわかっていない。本論文では、原子分解能のエネルギー分散型X線分光法を用いて、相転移中の原子レベルの再配列が調べられている。
Catalyzed assembly of hollow silver-sulfide cluster through self-releasable anion template
doi: 10.1038/s42004-018-0102-3
中空ナノ構造体の合理的構築は、形成経路の解明と中間体の観測が難しいため、困難である。本論文では、中空Ag56クラスターの形成が調べられ、触媒的な自己放出型テンプレートの形成機構が特定されている。
A tunable lanthanide cubane platform incorporating air-stable radical ligands for enhanced magnetic communication
doi: 10.1038/s42004-018-0090-3
ランタニドキュバンは、磁性分子の設計に興味深いモチーフであるが、概してイオン間の磁気交換が弱い。本論文では、空気中で安定なラジカル配位子を導入したランタニドキュバンの合成、続いて分子内磁気結合の増強が報告されている。
Adaptive aromaticity in S0 and T1 states of pentalene incorporating 16 valence electron osmium
doi: 10.1038/s42004-018-0018-y
ヒュッケル則とベアード則によると、一重項基底状態で芳香族性の化合物は最低三重項状態で反芳香族性であり、その逆も成り立つ。本論文では、オスマペンタレンは一重項基底状態でも最低三重項状態でも芳香族性であることを示すDFT計算結果が報告されている。
Direct synthesis and in situ characterization of monolayer parallelogrammic rhenium diselenide on gold foil
doi: 10.1038/s42004-018-0010-6
単層遷移金属ダイカルコゲナイド結晶の合成を改良するには、ドメイン構造や境界構造に関する知見が必要である。本論文では、化学気相成長法で金ホイル上に単層二セレン化レニウムを形成することで、in situでドメイン構造や欠陥構造の解析を可能にしている。
Approaches and challenges in the synthesis of three-dimensional covalent-organic frameworks
doi: 10.1038/s42004-018-0098-8
三次元共有結合性有機構造体は、二次元共有結合性有機構造体よりも研究例が少ないものの、魅力的な機能性材料である。本論文では、三次元共有結合性有機構造体化合物を合成するアプローチを概説するとともに、この分野の研究者が直面する主な課題にスポットを当てている。
Electronic origin of hydrogen storage in MOF-covered palladium nanocubes investigated by synchrotron X-rays
doi: 10.1038/s42004-018-0058-3
遷移金属ナノ粒子とMOFのハイブリッド材料系は有望な水素貯蔵特性を示すが、その界面相互作用の性質はまだよくわかっていない。本論文では、計算手法と分光法を用いて、パラジウムナノキューブ-MOF系における電子構造と電荷移動過程が調べられている。
Versatile bimetallic lanthanide metal-organic frameworks for tunable emission and efficient fluorescence sensing
doi: 10.1038/s42004-018-0016-0
水中の金属イオンや揮発性有機化合物を識別する汎用的な発光プラットフォームを開発することは、困難である。本研究では、二金属ランタニド金属有機構造体を含有する膜が、数秒以内に水中の第二鉄イオンを、数分以内にスチレン蒸気を選択的に認識している。
Mechanistic insight into the sensing of nitroaromatic compounds by metal-organic frameworks
doi: 10.1038/s42004-019-0135-2
金属有機構造体は、爆発性化合物のセンサーとして使用できる可能性があると提案されることが多いが、正確なセンシング機構はまだよくわかっていない。本論文では、水酸基で官能基化されたMOFが芳香族ニトロ化合物と相互作用した際の蛍光消光機構が実験で評価されている。
Vertically co-oriented two dimensional metal-organic frameworks for packaging enhanced supercapacitive performance
doi: 10.1038/s42004-017-0005-8
金属有機構造体は、将来のエネルギー貯蔵材料候補であるが、低い伝導性と電流コレクター上でのランダムな結晶配向による制約がある。本研究では、カーボンナノウォールに支持された均一配向結晶を取り入れた電極を作製することによって、電気化学的性能が向上している。
Robust and biocompatible catalysts for efficient hydrogen-driven microbial electrosynthesis
doi: 10.1038/s42004-019-0145-0
電極触媒と生体触媒を用いるCO2還元によって、化学品や燃料の持続可能な生産を可能にする有望な手段が得られる。 本論文では、メタン生成微生物やホモ酢酸生成微生物と豊富に存在する元素からなる電極を組み合わせることで、クーロン効率が最高100%のロバストな高速・選択的CO2還元が可能になっている。
Allosteric effects in cyclophilin mutants may be explained by changes in nano-microsecond time scale motions
doi: 10.1038/s42004-019-0136-1
酵素における分子運動と触媒作用の関係が議論の的になっている。本論文では、シクロフィリンAと触媒機能が欠損した3つの変異体のシミュレーションによって、活性構造と不活性構造の間でナノ秒スケールの相互変換が起こることが明らかになっている。この時間スケールはこれまで示された値よりも数桁速い。
Biocatalytic production of bicyclic β-lactams with three contiguous chiral centres using engineered crotonases
doi: 10.1038/s42004-018-0106-z
β-ラクタムは重要な抗生物質であるが、高いエナンチオマー純度で官能性誘導体を合成することは困難なことがある。本論文では、エナンチオ選択的マルチ酵素カスケードにマロニル-CoA誘導体を適用することで、3連続キラル中心を持つβ-ラクタムを高いジアステレオマー純度で得ている。
Biocatalytic methylation and demethylation via a shuttle catalysis concept involving corrinoid proteins
doi: 10.1038/s42004-018-0083-2
温和な条件下でC-O-エーテル結合を可逆的に形成・切断する位置選択的な方法が求められている。本論文では、コリノイド依存性メチルトランスフェラーゼを用いて各種フェニルメチルエーテルの脱メチル化や置換カテコールの官能基化を行う生体触媒的シャトルコンセプトが報告されている。
On-cell catalysis by surface engineering of live cells with an artificial metalloenzyme
doi: 10.1038/s42004-018-0087-y
生細胞の表面機能化によって合成生物学や薬物送達に向けての機会がもたらされる。本論文では、人工アリルデアリラーゼ(allylic deallylase)をコナミドリムシ(C. reinhardtii)の細胞表面に共有結合させ、in situで活性が維持されることを示している。
Towards a light driven molecular assembler
doi: 10.1038/s42004-019-0163-y
光をエネルギー源として用いて吸エルゴン反応を駆動する系を設計することは、大きな課題である。 本論文では、光スイッチング可能な配位子を用いて、溶液中で不安定な環状四バナジン酸種を形成している。
Measuring ion-pairing and hydration in variable charge supramolecular cages with microwave microfluidics
doi: 10.1038/s42004-019-0157-9
金属有機超分子ケージの水和とイオン対生成は、ゲストとの相互作用において重要な役割を果たすが、標準的な分析では定量化が困難である。本論文では、マイクロ波マイクロ流体工学を利用して、2種類の四面体金属有機ケージの水和とイオン対生成を測定したことが示されている。
Transparent-to-dark photo- and electrochromic gels
doi: 10.1038/s42004-018-0075-2
色や不透明度をスイッチングできる材料は、「スマートウィンドウ」の構成要素として有望である。本論文では、ナフタレンジイミドゲルの自己集合に基づくフォト・エレクトロクロミックデバイスにおいて、透明から黒色への光化学的または電気化学的な転移が可逆的に起こることが示されている。
Symmetry-based rational design for boosting chiroptical responses
doi: 10.1038/s42004-018-0035-x
キラルモノマーを組み合わせることでキロプティカル特性を高めることができるが、設計の指針はほとんど存在していない。本論文では、実験と計算を組み合わせた研究によって、円二色性および円偏光発光において高いキロプティカル応答を示すダブルヘキサヘリセンを設計する合理的な指針が提示されている。
Hyperthermostable cube-shaped assembly in water
doi: 10.1038/s42004-018-0014-2
水中で熱的に安定な構造体を自己集合によって形成することは、超分子化学における課題である。本論文では、弱い分子間力の協同作用によって両親媒性物質が会合し、水中で150 °Cまで安定な立方体型集合体が形成されている。
Oxygen-diffusion-driven oxidation behavior and tracking areas visualized by X-ray spectro-ptychography with unsupervised learning
doi: 10.1038/s42004-019-0147-y
セリウム–ジルコニウム固体は、不均一系触媒反応において重要な材料であるが、バルク試料中の酸素吸蔵・拡散を理解することは困難である。本論文では、三次元硬X線スペクトロタイコグラフィーと教師なし学習を用いて、反応事象がナノスケールで化学的に画像化されている。
Robust and biocompatible catalysts for efficient hydrogen-driven microbial electrosynthesis
doi: 10.1038/s42004-019-0145-0
電極触媒と生体触媒を用いるCO2還元によって、化学品や燃料の持続可能な生産を可能にする有望な手段が得られる。本論文では、メタン生成微生物やホモ酢酸生成微生物と豊富に存在する元素からなる電極を組み合わせることで、クーロン効率が最高100%のロバストな高速・選択的CO2還元が可能になっている。
Unravelling platinum nanoclusters as active sites to lower the catalyst loading for formaldehyde oxidation
doi: 10.1038/s42004-019-0129-0
貴金属の使用量が最小となる不均一系触媒組成を特定することは重要である。本論文では、白金系のホルムアルデヒド酸化触媒のサイズ-活性挙動が解析され、ナノメートルスケールのナノクラスターが最も効果的となる火山型の関係が確認されている。
Atomic palladium on graphitic carbon nitride as a hydrogen evolution catalyst under visible light irradiation
doi: 10.1038/s42004-019-0117-4
貴金属担持量の少ない安定な単原子触媒は光駆動水素発生において極めて重要であるが、可視光照射下での触媒挙動はまだよくわかっていない。本論文では、可視光の下で高い触媒活性を示すグラファイト状窒化炭素表面上の原子状パラジウムの開発と解析が行われている。
Aerobic oxidative cleavage of 1, 2-diols catalyzed by atomic-scale cobalt-based heterogeneous catalyst
doi: 10.1038/s42004-019-0116-5
1, 2-ジオールのC–C結合の酸化的開裂は重要な変換であるが、この変換向けの再利用可能で温和な酸素触媒系がない。本論文では、触媒の活性と再利用可能性の向上のためにNドープ炭素上に原子状分散したコバルトが提示され、その反応経路が調べられている。
Photochemical nitrogenation of alkanes and arenes by a strongly luminescent osmium(VI) nitrido complex
doi: 10.1038/s42004-019-0142-3
可視光照射によるC-H結合の活性化は、エネルギー効率の高い有機変換を実現する上で課題となっている。本論文では、オスミウム(VI)ニトリド錯体が励起状態で強い求電子剤として働くことによって環状アルカンやアレーンを窒素化できることが示されている。
Direct atomic identification of cation migration induced gradual cubic-to-hexagonal phase transition in Ge2Sb2Te5
doi: 10.1038/s42004-019-0114-7
相変化ランダム・アクセス・メモリーは、準安定な岩塩型構造から安定な六方晶構造への相転移に基づいているが、そうした相転移の詳細はまだよくわかっていない。本論文では、原子分解能のエネルギー分散型X線分光法を用いて、相転移中の原子レベルの再配列が調べられている。
Mechanochromism induced through the interplay between excimer reaction and excited state intramolecular proton transfer
doi: 10.1038/s42004-019-0113-8
励起状態分子内プロトン移動とエキシマー形成の共役は、基本的に重要だがめったに観察されない現象である。本論文では、定常状態分光法と時間分解分光法を組み合わせることによって、チアゾール系有機結晶においてこうした相互作用を観察している。
Atomistics of pre-nucleation layering of liquid metals at the interface with poor nucleants
doi: 10.1038/s42004-018-0104-1
異種界面における液体の層化は一般的な現象であるが、ほとんど理解されていない。本論文では、in situ X線結晶トランケーションロッド(CTR)解析とab-initio分子動力学シミュレーションを併用することによって、サファイア–Al 固体/液体界面における核生成前の液体の層化が調べられている。
Strong defocusing of molecular reaction times results from an interplay of geometry and reaction control
doi: 10.1038/s42004-018-0096-x
反応物質がナノモル濃度で存在する場合、現実の状況下では平均速度の概念が破綻する。本論文では、反応時間の全分布が示され、幾何学的制御と反応制御の概念が導入され、対応する反応深さの計算によって各領域が定量化されている。
Pushing the mass limit for intact launch and photoionization of large neutral biopolymers
doi: 10.1038/s42004-018-0095-y
中性生体高分子ビームの生成と検出は、特に高質量ペプチドの分析における重要課題である。本論文では、トリプトファンが多く含まれるため20 kDaを超える質量でも光イオン化可能な複雑なポリペプチドを、フェムト秒レーザー脱離によってインタクトで揮発できることが示されている。
An omnipresent diversity and variability in the chemical composition of atmospheric functionalized organic aerosol
doi: 10.1038/s42004-018-0074-3
有機エアロゾルの分子レベルの詳細なスペシエーションは、非常に難しい課題である。本論文では、全く異なる3か所の現地サイトから採取された官能基を持つ有機エアロゾルが分子レベルで広範に相互比較されており、各現地サイトの試料間で組成が大きくばらついていることが明らかになっている。
Dipolar couplings in solid polypeptides probed by 14N NMR spectroscopy
doi: 10.1038/s42004-018-0072-5
窒素核の固体NMRは、タンパク質の構造を解明する強力な手段をもたらすが、同位体標識が必要になることが多い。本論文では、空間を通しての窒素14とプロトンの相互作用によって、窒素15の同位体濃縮を必要とせずにシクロスポリンの構造帰属が可能になっている。
Direct quantification of nanoparticle surface hydrophobicity
doi: 10.1038/s42004-018-0054-7
ナノ物質の疎水性は、その挙動、特に生物系との相互作用に強い影響を及ぼす可能性があるが、溶液中で疎水性を定量化することは困難である。本論文では、設計されたコレクターとの結合を速度論的に解析することによって、溶液中のナノ粒子の表面疎水性を定量的に測定している。
Profiling the short-lived cationic species generated during catalytic dehydration of short-chain alcohols
doi: 10.1038/s42004-018-0053-8
カチオン種は、多くの触媒プロセスに関与しているが、量が少なく寿命が短いため検出が難しいことがある。本論文では、モデル触媒マイクロリアクターをオービトラップ型質量分析計のイオン導入口に直接取り付け、短鎖アルコールの触媒的脱水において数百のカチオン種を直接検出している。
Gas phase electrochemical analysis of amino acids and their fragments
doi: 10.1038/s42004-018-0046-7
電気化学的分析は、化学反応機構を深く理解する機会をもたらす可能性があるが、通常、液相中または固相中で行われる。本論文では、気相サイクリック・ボルタンメトリーの原理証明研究によって、8種類のアミノ酸のフラグメンテーション生成物が電気化学的に分解されている。
Absolute dating of lead carbonates in ancient cosmetics by radiocarbon
doi: 10.1038/s42004-018-0034-y
炭酸鉛は、古代から絵の具や化粧品に用いられた歴史的顔料に含まれている。しかし、無機物の放射性炭素年代測定はほとんど行われていない。本論文では、古代エジプトと古代ギリシャの化粧品に含まれる炭酸鉛を基に放射性炭素年代測定が行われ、天然顔料と合成顔料の区別も可能になっている。
Cupric-superoxide complex that induces a catalytic aldol reaction-type C–C bond formation
doi: 10.1038/s42004-019-0115-6
銅(II)-スーペルオキシド錯体は求電子剤として振る舞うことが知られているが、そうした種による求核反応性の例は数少ない。本論文では、単核銅(II)-スーペルオキシド種が単純なアルドール反応を促進することが示され、この反応性が配位子構造の小さな変化に対して敏感であることが見いだされている。
Nanoclay-modulated oxygen vacancies of metal oxide
doi: 10.1038/s42004-019-0112-9
金属酸化物系触媒材料中の酸素空孔は、触媒性能向上に極めて重要である。本論文では、クレイ(粘土)担持酸化コバルトに水酸基を導入すると酸素空孔導入と触媒活性向上が可能になることが、密度汎関数理論と実験データを用いて示されている。
Catalyzed assembly of hollow silver-sulfide cluster through self-releasable anion template
doi: 10.1038/s42004-018-0102-3
中空ナノ構造体の合理的構築は、形成経路の解明と中間体の観測が難しいため、困難である。本論文では、中空Ag56クラスターの形成が調べられ、触媒的な自己放出型テンプレートの形成機構が特定されている。
A tunable lanthanide cubane platform incorporating air-stable radical ligands for enhanced magnetic communication
doi: 10.1038/s42004-018-0090-3
ランタニドキュバンは、磁性分子の設計に興味深いモチーフであるが、概してイオン間の磁気交換が弱い。本論文では、空気中で安定なラジカル配位子を導入したランタニドキュバンの合成、続いて分子内磁気結合の増強が報告されている。
Oxidative reactivity of alkali-like superatoms of group 5 metal-encapsulating Si16 cage nanoclusters
doi: 10.1038/s42004-018-0052-9
5族元素を内包したシリコンケージは「超原子」挙動を示すと提唱されているが、この説は定量的に研究されていなかった。本論文では、一連の5族金属内包M@Si16ケージの酸化カイネティクスが周期表に見られる傾向と似た周期的傾向を示すことが明らかになっている。
Air-stable phosphorus-doped molybdenum nitride for enhanced elctrocatalytic hydrogen evolution
doi: 10.1038/s42004-018-0097-9
モリブデン系電極触媒は、水分解触媒として広く研究されているが、表面酸化のせいで効率が低い。本論文では、空気中での安定性と高い水素発生活性を示す窒化モリブデンが合成されたことが報告されている。
Electronic origin of hydrogen storage in MOF-covered palladium nanocubes investigated by synchrotron X-rays
doi: 10.1038/s42004-018-0058-3
遷移金属ナノ粒子とMOFのハイブリッド材料系は有望な水素貯蔵特性を示すが、その界面相互作用の性質はまだよくわかっていない。本論文では、計算手法と分光法を用いて、パラジウムナノキューブ-MOF系における電子構造と電荷移動過程が調べられている。
Directly converting carbon dioxide to linear α-olefins on bio-promoted catalysts
doi: 10.1038/s42004-018-0012-4
二酸化炭素を有用な汎用化学品に変換することは、人為的排出ガスを活用する有望なアプローチである。本研究では、カーボンに担持させた鉄とバイオマス由来のアルカリ促進剤を併用して、直接二酸化炭素を重質の直鎖末端オレフィンに変換している。
Cobalt doping of tin disulfide/reduced graphene oxide nanocomposites for enhanced pseudocapacitive sodium-ion storage
doi: 10.1038/s42004-018-0086-z
充電式ナトリウムイオン電池は、リチウム技術に代わる有望な代替技術であるが、リチウム系よりも高性能負極材料が少ない。本論文では、コバルトドープ二硫化スズ/還元型酸化グラフェンナノコンポジットが作製され、ナトリウムの高速化とレート性能の向上が実証されている。
Dandelion-shaped manganese sulfide in ether-based electrolyte for enhanced performance sodium-ion batteries
doi: 10.1038/s42004-018-0084-1
金属硫化物材料は電気伝導度が低いため、ナトリウムイオン電池への応用が制限される。本論文では、5.0 A g−1の電流密度で1000サイクル以上にわたって340 mAh g−1の容量を維持するナトリウムイオン電池の硫化マンガン負極が報告されている。
Intercalated metal–organic frameworks with high electronic conductivity as negative electrode materials for hybrid capacitors
doi: 10.1038/s42004-018-0064-5
インターカレーション金属有機構造体は、スーパーキャパシターとしての可能性が見込まれている。本論文では、実験的手法と計算的手法を用いて4,4′-ビフェニルジカルボン酸二リチウムの性能が調べられ、この材料の電子伝導度とリチウムイオン伝導度が高い理由について知見が得られている。
Porous amorphous silicon film anodes for high-capacity and stable all-solid-state lithium batteries
doi: 10.1038/s42004-018-0026-y
シリコンは、高い理論容量を持つため有望な負極材料であるが、充放電サイクル中の体積変化が大きいためサイクル全体にわたって不安定になる可能性がある。本論文では、無機固体電解質と多孔シリコン膜を用いることによって安定性が向上する(100サイクルにわたって99.8%を超える効率が維持される)ことが報告されている。
Carbon nanotubes and manganese oxide hybrid nanostructures as high performance fiber supercapacitors
doi: 10.1038/s42004-018-0017-z
二酸化マンガンは、エネルギー貯蔵用途に有望な材料であるが、脆いうえ伝導度が低いため性能に限りがある。本論文では、カーボンナノチューブネットワーク上に二酸化マンガンドメインを電気化学的に析出させることで、フレキシブル伝導性ハイブリッドファイバー型スーパーキャパシターが作製されている。
Vertically co-oriented two dimensional metal-organic frameworks for packaging enhanced supercapacitive performance
doi: 10.1038/s42004-017-0005-8
金属有機構造体は将来のエネルギー貯蔵材料の候補であるが、低い伝導性と電流コレクター上でのランダムな結晶配向によって性能が制限されている。本論文では、カーボンナノウォールによって支持された均一配向結晶を有する電極を作製することで、電気化学的性能を向上させている。
Tuning artificial intelligence on the de novo design of natural-product-inspired retinoid X receptor modulators
doi: 10.1038/s42004-018-0068-1
人工知能を用いて医薬品化学に取り組む方法がますます強力になっているが、生物活性分子の予測には苦戦している。本論文では、機械学習モデルによって、合成的に実現可能な天然物模倣体が生成され、この物質がレチノイドX受容体に対して生物活性を持つことが示されている。
Accuracy of theoretical catalysis from a model of iron-catalyzed ammonia synthesis
doi: 10.1038/s42004-018-0063-6
DFTは触媒プロセスの研究に広く用いられているが、その精度が議論の的になっている。本論文では、鉄触媒を用いるアンモニア合成の単純なモデルが実験データや高度な量子力学的データに対して評価され、DFTの結果が大きくばらついていることが示されている。
Current-constrained density-matrix theory to calculate molecular conductivity with increased accuracy
doi: 10.1038/s42004-018-0030-2
分子伝導は、分子を通る電子の量子流であり、これまでの理論的手法では概して過大に予測されている。本論文では、電流制約電子構造に基づく方法によって、既存のコンダクタンス計算手法が最高で2桁改善されることが報告されている。
Adaptive aromaticity in S0 and T1 states of pentalene incorporating 16 valence electron osmium
doi: 10.1038/s42004-018-0018-y
ヒュッケル則とベアード則によると、一重項基底状態で芳香族性の化合物は最低三重項状態で反芳香族性であり、その逆も成り立つ。本論文では、オスマペンタレンは一重項基底状態でも最低三重項状態でも芳香族性であることを示すDFT計算結果が報告されている。
Large-scale analysis of water stability in bromodomain binding pockets with grand canonical Monte Carlo
doi: 10.1038/s42004-018-0019-x
タンパク質から水分子を移動させることによってリガンドの親和性や選択性が向上する可能性があるが、個々の水の結合エネルギーを測定することは困難である。本論文では、結合自由エネルギーの計算結果を用いて、35個のブロモドメインに保存されている水の安定性を推定し、移動しやすさを予測している。
Generic approach to access barriers in dehydrogenation reactions
doi: 10.1038/s42004-017-0001-z
遷移状態のエネルギー相関は、コンピューターによる新触媒探索のカギであるが、計算コストが高くつく。本論文では、結合次数保存則に基づく最近のアプローチを一般化し、低指数金属表面上での脱水素反応に適用している。
Catalytic N-modification of α-amino acids and small peptides with phenol under bio-compatible conditions
doi: 10.1038/s42004-018-0042-y
フェノールとシクロヘキセノンは、パラジウム触媒による制御された水素化または酸化によって相互変換可能であり、アミンのN官能基化を可能にする。本論文では、この反応がアミノ酸や小ペプチドに適用され、さまざまな反応困難な基質がシクロヘキセノンを用いてN-アリール化、フェノールを用いてN-アルキル化されている。
Straightforward access to linear and cyclic polypeptides
doi: 10.1038/s42004-018-0040-0
アミノ酸N-カルボキシ無水物の開環重合は、確立されたポリペプチド合成方法であるが、生成物分布の制御には慎重な最適化を要することがある。本論文では、単に開始剤の選択を変えるだけで、温和な条件下で直鎖状または環状ポリペプチドを合成する一般的な方法が得られている。
Synthesis of disulfide-rich heterodimeric peptides through an auxiliary N, N-crosslink
doi: 10.1038/s42004-018-0036-9
インスリンや関連ヘテロ二量体ペプチドは難しい合成ターゲットであり、通常、NとCをつなぐバイオミメティック化学リンカーを用いて合成されるが、このリンカーを外すのに2ステップを要する。本論文では、NとNをつなぐ対称性リンカーを用いて高い効率で異なる6つのペプチドが得られており、1化学ステップでリンカーが除去されている。
Synthesis of pyrroles via ruthenium-catalyzed nitrogen-transfer [2 + 2 + 1] cycloaddition of α,ω-diynes using sulfoximines as nitrene surrogates
doi: 10.1038/s42004-018-0022-2
ナイトレン移動を伴う付加環化は、有用置換ピロールを合成する便利な手段となる。本論文では、通常とは異なる窒素移動試薬としてのスルホキシイミンとルテニウム触媒を用いるジインの[2+2+1]付加環化が報告されている。
Gas phase electrochemical analysis of amino acids and their fragments
doi: 10.1038/s42004-018-0046-7
電気化学的分析は、化学反応機構を深く理解する機会をもたらす可能性があるが、通常、液相中または固相中で行われる。本論文では、気相サイクリック・ボルタンメトリーの原理証明研究によって、8種類のアミノ酸のフラグメンテーション生成物が電気化学的に分解されている。
Digital holography of optically-trapped aerosol particles
doi: 10.1038/s42004-018-0047-6
大気中のエアロゾル粒子のサイズと形態に関する動的情報を得ることは、概して困難である。本論文では、光学トラップによって空間的に閉じ込められた空中非担持エアロゾル粒子のホログラフィックイメージングが導入され、複数の時間スケールにわたって非接触観察が可能になっている。
Revealing salt-expedited reduction mechanism for hollow silicon microsphere formation in bi-functional halide melts
doi: 10.1038/s42004-018-0041-z
溶融塩によるシリカの熱化学的還元によって、有望な微細構造シリカエネルギー材料が生成することが知られている。本論文では、実験による研究とコンピューターによる研究を組み合わせることによって、溶融塩化アルミニウムによるシリカの低温熱化学的還元に関する機構が提案されている。
Direct observation of hierarchic molecular interactions critical to biogenic aerosol formation
doi: 10.1038/s42004-018-0038-7
エアロゾル形成の初期段階を調べることは、物理化学や環境化学における課題となっている。本論文では、光電子分光法、量子化学計算、分子ダイナミクスのシミュレーションによって、特定の官能基相互作用が硫酸水素アニオンと有機分子のクラスターを安定化させる機構が定量的に示されている。
Current-constrained density-matrix theory to calculate molecular conductivity with increased accuracy
doi: 10.1038/s42004-018-0030-2
分子伝導は、分子を通る電子の量子流であり、これまでの理論的方法では概して過大に予測されている。本論文では、電流制約電子構造に基づく方法によって、既存のコンダクタンス計算手法が最高で2桁改善されることが報告されている。
Water harvesting from air with a hygroscopic salt in a hydrogel–derived matrix
doi: 10.1038/s42004-018-0028-9
空気中からの水の収集は、辺境乾燥地域において淡水供給を確保する有望な方法である。本論文では、塩化カルシウムをアルギン酸由来のビーズに封入した複合材料が報告されており、この材料が1立方メートル当たり660 kgの水を空気中から可逆的に吸収することが示されている。
Reversible control of triplet dynamics in metal-organic framework-entrapped organic emitters via external gases
doi: 10.1038/s42004-018-0027-x
フォトルミネッセンスには重要な用途があるが、有機分子によって室温りん光を増強することは困難である。本研究では、外部トリガーとして重原子ガスを用いて、金属有機構造体中に固定した発光体の室温りん光を可逆的に増強している。
Direct observation of tin sites and their reversible interconversion in zeolites by solid-state NMR spectroscopy
doi: 10.1038/s42004-018-0023-1
金属置換ゼオライト触媒の活性サイトを特定することは、異なる金属サイトが似たような分子環境を有する可能性があるため、難しい場合がある。本研究では、固体NMRを用いて、Sn-βゼオライト中の2つの異なるオープンスズサイトを特定し、オープンサイトとクローズドサイトの間の可逆的変換を検出している。
Versatile bimetallic lanthanide metal-organic frameworks for tunable emission and efficient fluorescence sensing
doi: 10.1038/s42004-018-0016-0
水中の金属イオンや揮発性有機化合物を識別する汎用的な発光プラットフォームを開発することは、困難である。本研究では、二金属ランタニド金属有機構造体を含有する膜が、数秒以内に水中の第二鉄イオンを、数分以内にスチレン蒸気を選択的に認識している。
In situ generation of intercalated membranes for efficient gas separation
doi: 10.1038/s42004-017-0002-y
酸化グラフェン膜は、低分子量ガスの分離に有望な材料である。本論文では、金属有機構造体と酸化グラフェンからなる複合膜は、酸化グラフェン単独の場合と比較して、水素と二酸化炭素を分離する選択性が優れていることが示されている。
Vertically co-oriented two dimensional metal-organic frameworks for packaging enhanced supercapacitive performance
doi: 10.1038/s42004-017-0005-8
金属有機構造体は、将来のエネルギー貯蔵材料候補であるが、低い伝導性と電流コレクター上でのランダムな結晶配向による制約がある。本研究では、カーボンナノウォールに支持された均一配向結晶を取り入れた電極を作製することによって、電気化学的性能が向上している。