Communications Physics に掲載された一次研究論文(Articles および Letters)について、その概要を日本語で紹介しています。
Monitoring the size of low-intensity beams at plasma-wakefield accelerators using high-resolution interferometry
doi: 10.1038/s42005-021-00717-x
レーザー駆動加速器が、幅広い応用を実現できるようになるには、厳密な特性評価によってその性能が保証されなければならない。今回、ビームのサイズの高分解能測定を可能にする干渉計測法が実証された。
Peeling graphite layer by layer reveals the charge exchange dynamics of ions inside a solid
doi: 10.1038/s42005-021-00686-1
イオンと固体の相互作用は、さまざまな複雑な過程の影響を受けており、その直接的な実験観測自体に一連の難題が課されている。今回著者たちは、グラフェンの層を通って移動するイオンの電子捕獲の根底にある機構を単層精度で調べ記述する、実験と第一原理計算を組み合わせた方法について報告している。
Country distancing increase reveals the effectiveness of travel restrictions in stopping COVID-19 transmission
doi: 10.1038/s42005-021-00620-5
エピデミックの拡散は、本質的に人の移動パターンによって駆動されるとともに、輸送システムによって制約され、その理解にはネットワークによるアプローチが重要である。今回著者たちは、国家間のディスタンスの枠組みを開発して、航空路線ネットワークの上でCOVID-19の拡がりを捉え、複数の発生点の存在下で移動制限の有効性を分析し、協調的な旅行制限を最適化する戦略を示唆している。
Optimal, near-optimal, and robust epidemic control
doi: 10.1038/s42005-021-00570-y
COVID-19のパンデミックは、たとえ継続期間が限られていても医薬品以外のエピデミック緩和戦略の必要性を実証した。今回著者たちは、未感染者-感染者-回復者モデルにおけるエピデミックのピークを抑える、時間を限定した最適戦略と準最適戦略を解析によって導き、そうした戦略が実施時期の違いに敏感なため、医薬品以外の疾病管理には時宜を得た行動が不可欠であることを示している。
Quantum simulation of parity–time symmetry breaking with a superconducting quantum processor
doi: 10.1038/s42005-021-00534-2
量子物理学では、オブザーバブルはエルミート的であると一般的に考えられているが、正の実固有値を持つ非エルミート系の例が、特に開放系の中にいくつか存在する。今回、補助キュービットを含む拡張手順を用いて、超伝導量子プロセッサーで非エルミートハミルトニアンの発展がシミュレートされ、例外点におけるパリティ-時間対称性を破る相転移が観測されている。
The link between star formation and gas in nearby galaxies
doi: 10.1038/s42005-020-00493-0
銀河における星形成の仕組みは広範に研究されているが、銀河のガス量の役割と星への変換効率は、まだ十分にわかっていない。今回、不検出に関連する偏りの可能性を低減し、近傍銀河における星形成、分子ガス、中性ガスの関係を定量化したデータ駆動統計分析の結果が報告されている。
Leveraging the orthogonality of Zernike modes for robust free-space optical communication
doi: 10.1038/s42005-020-00468-1
自由空間光通信には、高い情報転送速度を実現できる可能性があるが、現行の方式は乱流や収差の影響を受ける。今回、ゼルニケ多項式モードを用いた位相への情報のエンコードが実験的に実証されるとともに、乱流の存在下で1 kmを超える運用を実現できることがシミュレーションによって示唆された。
The impact of travel and timing in eliminating COVID-19
doi: 10.1038/s42005-020-00470-7
COVID-19の流行を抑制する大規模な封じ込め対策は、経済にも私たちのメンタルヘルスにも影響が大きすぎて、長期的には持続可能でないことがわかっている。今回著者たちは、地理的地域間の移動の減少と、タイムリーな地域内の抑制措置によって、地域間再生産数を1以下に低減できるので、長期的なロックダウン対策を必要とせずにこのエピデミックの撲滅と再流行の防止が可能になることを示している。
Time-stretch infrared spectroscopy
doi: 10.1038/s42005-020-00420-3
分光法の測定時間を短くすれば、より速い速度で動的な系の測定結果が得られるようになる。今回、1秒当たり8000万スペクトルの速度で動作する時間伸張赤外分光計が報告され、2種類の分子の吸収測定を用いて検証されている。
Energy relaxation pathways between light-matter states revealed by coherent two-dimensional spectroscopy
doi: 10.1038/s42005-020-00424-z
最近、分光研究によって、励起子ポラリトンの光-物質相互作用が室温で解明されたが、その正確な励起状態ダイナミクスはまだよくわかっていない。今回、広帯域2Dフーリエ変換分光法によって、ポラリトン状態間の緩和と暗状態の役割が明らかになっている。
Flow-to-fracture transition and pattern formation in a discontinuous shear thickening fluid
doi: 10.1038/s42005-020-0382-7
密度の高い紛粒系における非連続的なずり粘化転移の根底にある微視的な機構は、まだ議論の的になっている。今回著者たちは、閉じ込めたトウモロコシ澱粉懸濁液を用いたHele-Shawセル実験における侵入パターンの形状の特徴を明らかにすることによって、この転移を調べている。
Single channel Josephson effect in a high transmission atomic contact
doi: 10.1038/s42005-020-00397-z
超伝導体の多くの特徴がジョセフソン効果にエンコードされており、局所レベルでの変化の解明が、関連現象の説明に役立つ可能性がある。今回著者たちは、走査型トンネル顕微鏡法を用いて、ジョセフソン効果の局所的な変化と、そうした変化と輸送チャネルの構造がどのように関連しているかを調べている。
Atomic-scale control of tunneling in donor-based devices
doi: 10.1038/s42005-020-0343-1
ドナーを用いた固体量子コンピューターデバイスには、原子レベルで精密な製造とトンネリング過程の原子スケールの制御が必要である。今回著者たちは、 表面格子に基づいてトンネルギャップが変わる一連の単一電子トランジスターの再現性のある製造について報告し、理論的に予測されたような、原子レベルで精密な変化の関数としてのトンネリングの指数スケーリングを実証している。
Autonomous molecular design by Monte-Carlo tree search and rapid evaluations using molecular dynamics simulations
doi: 10.1038/s42005-020-0338-y
新たな機能材料の特定は、人力でもアルゴリズムベースの解析法を用いても、複雑でリソースを多く必要とするタスクである。今回著者たちは、モンテカルロ木探索と分子動力学シミュレーションを組み合わせた自律型探索システムを提示し、工業潤滑油用の有機分子を粘度に基づいて特定することに成功している。
Frustrated quantum magnetism with Bose gases in triangular optical lattices at negative absolute temperatures
doi: 10.1038/s42005-020-0323-5
幾何学的フラストレーションを示す量子反強磁性体の古典的コンピューターによるシミュレーションは、非常に要求が厳しく、量子シミュレーションによって、量子効果があまり問題にならない高温領域を調べることができる。今回著者たちは、光格子中の極低温ボース気体のプロトコルを使って、負の絶対温度の領域を実現でき、その温度でフラストレートしたボースハバードモデルを研究できることを示している。
Ultrashort low-loss Ψ gates for linear optical logic on Si photonics platform
doi: 10.1038/s42005-020-0298-2
光計算用の部品の性能は、非線形応答が小さいためこれまで制限されており、消費エネルギーが増えると速度が低下する。本論文では、20 Gbpsで動作できる、Si細線からなるマイクロスケールの低損失線形光論理ゲートが実証されている。
Dual-wavelength 3D photoacoustic imaging of mammalian cells using a photoswitchable phytochrome reporter protein
doi: 10.1038/s42005-017-0003-2
現在の光音響レポーター遺伝子イメージング法では、多波長励起と複雑な計算法が必要である。本研究では、光スイッチング可能なレポータータンパク質と2波長信号取得を使った簡単な代替実験法を提示している。この方法は、広範囲のin vivo光音響イメージングシステムに適用できる。
Exponential energy harvesting through repetitive reconfigurations of a system of capacitors
doi: 10.1038/s42005-018-0010-y
絶え間なく電気を必要としている世界では、周囲環境からの環境発電技術によって、その場で発電できる。著者たちは、外部電源から指数関数的な増加率でエネルギーを効率良く抽出するシステムを実証し、設計している。
A high electron mobility phonotransistor
doi: 10.1038/s42005-018-0059-7
電界効果トランジスタは、電圧をかけることによって電気伝導率を変えることのできるデバイスで、現代の電気回路の重要な構成要素である。著者たちは、電圧の代わりに音波パルスによって伝導率を変えることができる、フォノトランジスタと呼ばれる音響電子デバイスを作製している。
Boosting magnetic resonance imaging signal-to-noise ratio using magnetic metamaterials
doi: 10.1038/s42005-019-0135-7
磁気共鳴イメージングは、多くの病気の診断に広く使われており、画像分解能を改善し、取得時間を短くする継続的な取り組みが強く求められている。著者たちは、特別に設計したメタマテリアルを利用すると、信号対雑音比の改善に役立つ可能性があり、MRIの性能の向上にもつながりうることを実証している。
Observation of Hofstadter butterfly and topological edge states in reconfigurable quasi-periodic acoustic crystals
doi: 10.1038/s42005-019-0151-7
ホフスタッターの蝶は、二次元格子における印加磁場下での電子の挙動を、一対の蝶の翅として絵画的に表すフラクタルパターンである。今回著者たちは、微調整した一次元音響アレイの音響状態密度を測定することによって、このパターンを再現している。
The sound of Bell states
doi: 10.1038/s42005-019-0203-z
量子現象は、いわゆる量子アナログによってよりわかりやすい方法で調べて、理解しやすくできるとともにより容易に応用できるようになることが多い。著者たちは、結合した1D弾性導波路を重ね合わせて、音響ベル状態を実験的に実現している。この音響ベル状態によって、複素振幅係数を調整して、ベル状態ヒルベルト空間の一部を調べることが可能になり、フォノニクスによる量子エンタングルメントの古典版を用いて量子エンタングルメントを調べるという選択肢が開かれる。
Nanobolometer with ultralow noise equivalent power
doi: 10.1038/s42005-019-0225-6
ボロメーターは1世紀以上の間さまざまな応用に使われており、雑音を減らし、読み出し速度を高めることを目標とした開発が、最近行われている。著者たちは、以前に示されたより、雑音が1桁低く、読み出し速度が1桁以上高いボロメーターを提示している。これによってこのボロメーターは、量子技術やテラヘルツ技術における応用に有望な候補になる。
Repetitive stretching of giant liposomes utilizing the nematic alignment of confined actin
doi: 10.1038/s42005-018-0019-2
分子ロボティクスを使って、天然の高分子ポリマーを封入した細胞サイズのリポソームを作り、生きた細胞に似た運動を生み出すことができる。本論文では、高濃度のアクチンをリポソームへ封入すると、リポソームの変形が生じることが示されている。
Rotating lamellipodium waves in polarizing cells
doi: 10.1038/s42005-018-0075-7
ラメリポディアの波は多くの細胞型で観測される極めて一般的な現象であり、基板に沿って付着して動く動物細胞に典型的な現象である。著者たちは、こうした波のダイナミクスは一組みの最小限で明確なパラメーターで再現できることを示すモデルを提示している。
A statistical approach to detect protein complexes at X-ray free electron laser facilities
doi: 10.1038/s42005-018-0092-6
高エネルギーX線を使った回折実験を用いて、分子構造が高い分解能で決定されており、新しい自由電子レーザーによって非結晶性試料の回折実験を実現できるようになっている。著者たちは、巨大分子複合体のフラッシュX線撮像実験においてヒット事象を特定する統計的方法を示し、RNAポリメラーゼデータで実証している。
Chemical potential formalism for polymer entropic forces
doi: 10.1038/s42005-019-0118-8
生物環境や単一分子実験における閉じ込められたポリマーのエントロピー効果の定量化は、困難な課題である。著者たちは、溶液の化学ポテンシャルと同じ戦略を用いて、簡単なエントロピー力の表式を導いて、この難しさを大幅に軽減し、閉じ込められたポリマーに関するいくつか最近の実験結果を解明している。
Confinement and substrate topography control cell migration in a 3D computational model
doi: 10.1038/s42005-019-0185-x
発生、創傷治癒、分化、癌の転移において、細胞は不均一な環境を連続的に動くため、閉じ込めやさまざまな基板形状によって細胞移動がどのように制御されるかを理解することは、細胞の運動性に対する最初の概念的枠組みの構築を始めるのに極めて重要である。今回著者たちは、この細胞の運動と速度に複雑な環境が及ぼす影響を系統的に調べる計算手法を開発している。
Concurrent atomic force spectroscopy
doi: 10.1038/s42005-019-0192-y
原子間力顕微鏡(AFM)によって、精密な画像と力の測定結果が得られ、ナノテクノロジーから生物学の分野に大きな恩恵をもたらしているが、力の測定精度は依然として10~25%のオーダーである。著者たちは、同時原子間力分光法と名付けた代替方法を提示し、タンパク質の機械的なアンフォールディングを調べている。この方法では、AFM測定とモンテカルロシミュレーションを組み合わせて、カンチレバーの較正誤差が測定される力の誤差へどのように伝わるか求め,相対的な機械測定における較正の不確かさを克服している。
Tilted vortex cores and superconducting gap anisotropy in 2H-NbSe2
doi: 10.1038/s42005-018-0028-1
化合物NbSe2は、電子挙動が独特であるため、非常に興味深い対象であり、エキゾチックな現象を理解するための典型的な材料となっている。著者たちは、磁場を傾けることによって、NbSe2表面の電子構造の特徴を、走査型トンネル顕微鏡を使ってより明瞭に分析することができた。
A theory on skyrmion size
doi: 10.1038/s42005-018-0029-0
スキルミオンは、トポロジカルな磁気的特徴で、将来のデータ記憶デバイスや情報処理デバイスにおいて重要な役割を果たすと期待されている。著者たちは、孤立したスキルミオンのサイズと壁の厚さを計算する理論的方法を概説している。
Topolectrical Circuits
doi: 10.1038/s42005-018-0035-2
トポロジカル絶縁体の発見によって、物質のトポロジカル状態を調べる豊かな分野が生まれている。本論文は、従来の回路素子のアセンブリーによってさまざまなトポロジカルバンド構造が実現される、トポロジカル電気回路という考えを導入して、この分野に寄与している。
Theory of Coulomb drag in spatially inhomogeneous 2D materials
doi: 10.1038/s42005-018-0039-y
低電力エレクトロニクスにおける二次元ヘテロ構造体の潜在的な応用を促進するには、その層間の電子相互作用を解明する必要がある。著者たちは、2重層ヘテロ構造体において実験的に観測されたクーロンドラッグの挙動を説明するために、電荷不均一性を組み込んだ輸送理論を開発している。
Electronic excitations stabilized by a degenerate electron gas in semiconductors
doi: 10.1038/s42005-018-0033-4
準粒子複合体を維持する系は、特異な光学的特徴と独特な物理特性を示しうる。今回著者たちは、高濃度ドープしたバルク半導体を調べ、中性の縮退電子ガスによって安定化された新種の準粒子を示唆する実験証拠を得ており、collexonと名付けている。
Dynamical equilibration across a quenched phase transition in a trapped quantum gas
doi: 10.1038/s42005-018-0023-6
ボース‐アインシュタイン凝縮体への非平衡相転移の特性評価は、物性物理学における未解決の問題である。著者たちはこの動的過程の詳細な数値的特性評価を行って、この転移を横切った後の平衡過程に関する知見を得ている。
Ramsey interferometry with trapped motional quantum states
doi: 10.1038/s42005-018-0030-7
ラムゼー干渉計は、分光法や物質波干渉法の一般的なツールとして使われている。著者たちは、多体量子系のコヒーレンスを調べる新しいツールとして、光格子にトラップされた量子状態を利用するエコー・ラムゼー干渉計を実証している。
Absolute strong-field ionization probabilities of ultracold rubidium atoms
doi: 10.1038/s42005-018-0032-5
極低温原子は、光‐物質相互作用を正確に調べる理想的な系として役立つ。著者たちは、フェムト秒レーザーパルスにさらされたルビジウム原子の強電場イオン化の絶対確率を報告し、第一原理理論が、1に近いケルディッシュパラメーターでそのデータと完全に一致することを示している。
Spontaneous light-mediated magnetism in cold atoms
doi: 10.1038/s42005-018-0034-3
低温原子気体や極低温原子気体は、エキゾチックな磁気現象の古典的特徴や量子的特徴を分析するシミュレーターとして使うことができる。著者たちは、自己組織化した光格子中の低温原子ガスに外部磁場をかけて、光が媒介するスピン‐スピン相互作用を通したさまざまな磁性相の間の転移を実証している。
Ramsey interferometry with trapped motional quantum states
doi: 10.1038/s42005-018-0030-7
ラムゼー干渉計は、分光法や物質波干渉法の一般的なツールとして使われている。著者たちは、多体量子系のコヒーレンスを調べる新しいツールとして、光格子にトラップされた量子状態を利用するエコー・ラムゼー干渉計を実証している。
A broadband DLCZ quantum memory in room-temperature atoms
doi: 10.1038/s42005-018-0057-9
量子メモリーは、量子ネットワークや量子コンピューターなどの量子に基づく技術へ移行するのに不可欠である。著者たちは、自発ラマン散乱を利用して、室温で作動できる広帯域量子メモリープロトコルを実証している。
Single hole spin relaxation probed by fast single-shot latched charge sensing
doi: 10.1038/s42005-019-0113-0
量子計算デバイスで使うスピンキュービット系の研究では、最近、従来の単一電子スピンではなく正孔スピンの利用に重点が置かれている。著者たちは、GaAsゲート二重量子ドットデバイスを使ったスピン感度の高い新しい電荷ラッチ技術を開発して、単一正孔のスピン緩和時間を報告している。
Experimental data from a quantum computer verifies the generalized Pauli exclusion principle
doi: 10.1038/s42005-019-0110-3
パウリの排他原理は、電子の軌道自由度にさらなる制約条件を課す一般化した形で定式化できる。本論文では、この制約条件を、5個のキュービットの量子コンピューター上での実験によって、10の18乗分の1の誤差で検証している。
Complex networks from classical to quantum
doi: 10.1038/s42005-019-0152-6
量子通信と量子計算は、量子系を記述する古典ネットワークでは、複雑ネットワーク法を量子領域へ一般化するにはもはや十分とは思われない、データ集約的な領域に現在入っている。著者たちは、基本的に量子効果に基づくネットワーク理論をもたらすこのパラダイムシフトに関する最近の進展を概説している。
Colloidal topological insulators
doi: 10.1038/s42005-017-0004-1
トポロジカル絶縁体はバルクでは絶縁性であるが、導電性のエッジ状態を示す。本研究では、トポロジカル絶縁体のコロイド類似体を報告し、基礎となる磁気格子のエッジとコーナーの両方に沿ってコロイドを輸送できるエッジ状態が生じることを実験的に実証している。
Repetitive stretching of giant liposomes utilizing the nematic alignment of confined actin
doi: 10.1038/s42005-018-0019-2
分子ロボティクスを使って、天然の巨大分子ポリマーを封入している細胞サイズのリポソームを作り、生細胞に似た運動を生み出すことができる。本論文では、リポソームに高濃度のアクチンを封入すると、リポソームが変形することを示している。
Breakdown in the directional transport of droplets on the peristome of pitcher plants
doi: 10.1038/s42005-018-0038-z
天然の表面の多くが水を輸送する方法は、何世紀にもわたってとても興味をそそる主題であった。本論文では、食虫植物の口縁部における液滴の輸送に関する実験研究と理論研究を報告し、この輸送が表面と水の両方のマルチスケール構造に依存することを示している。
Emergence of traveling waves in linear arrays of electromechanical oscillators
doi: 10.1038/s42005-018-0086-4
繊毛など小さなスケールの生物系では、駆動された振動子アレイ内で自発的に組織化するリズミカルな運動パターンによって動きが実現される。著者たちは、バイアスをかけた電極の間を振動する導電性の球によく似た進行波運動が生じ、この運動を荷物の輸送方向を決めるのに利用できることを示している。
Nanoscale spin-wave circuits based on engineered reconfigurable spin-textures
doi: 10.1038/s42005-018-0056-x
マグノニクスは、情報処理向けの新技術として勢いを増している。著者たちは、時間分解走査型透過X線顕微鏡イメージングを使って、磁壁に基づくナノパターン化回路内部のスピン波伝搬を実験的に実証した。
Primary thermometry of a single reservoir using cyclic electron tunneling to a quantum dot
doi: 10.1038/s42005-018-0066-8
局所温度の測定は、ナノスケールの量子熱力学の研究において重要である。著者たちは、ナノエレクトロニクスデバイスの局所温度の正確な測定に使うことができる、量子ドットと単一電子リザーバーの間の周期的電子トンネリングに基づくセンサを報告している。
Atomic imprinting into metallic glasses
doi: 10.1038/s42005-018-0076-6
ナノインプリンティングは、モールド表面の特徴をレプリカ上へ転写できる技術であり、ナノ構造化デバイスの製造に適している。著者たちは、バルクの金属ガラスでできたレプリカへの原子レベルでのSrTiO3単結晶の構造の特徴のインプリンティングを可能にする方法を報告している。
Time-resolved electrostatic force microscopy using tip-synchronized charge generation with pulsed laser excitation
doi: 10.1038/s42005-019-0108-x
電荷ダイナミクスの解明と電荷の生成、移動、再結合の直接観察は、エレクトロニクスデバイス用のさまざまな材料の開発と応用を促進するのに重要である。著者たちは、サブマイクロ秒の時間枠でナノスケールの電荷移動を視覚的に観察する時間分解静電力顕微鏡法を開発している。
Realisation of a frustrated 3D magnetic nanowire lattice
doi: 10.1038/s42005-018-0104-6
人工スピンアイスは、バルクのフラストレートした物質に見られる特性の多くを模擬する、ナノスケールのフラストレートした格子である。本研究では、新しい方法を使って、3Dナノ構造化フラストレート格子を作っている。次に磁気顕微鏡法とシミュレーションを用いて、その基礎となるスピンテクスチャーを解明している。
Electron paramagnetic resonance spectroscopy using a single artificial atom
doi: 10.1038/s42005-019-0133-9
電子常磁性共鳴(EPR)分光法は、不対電子を明確に検出する必要がある多くの科学分野で重要な技術である。著者たちは、スピン磁化の高感度検出器として単一の人工原子を使い、試料体積が小さいときの感度を著しく改善できるEPR分光計を提案している。
Three-observer classical dimension witness violation with weak measurement
doi: 10.1038/s42005-018-0011-x
次元は量子情報理論の重要なリソースである。本論文では、弱測定法を利用して、いくつかのプロトコルの中で、デバイスに依存しない半量子情報理論に適用できる3人の観察者の次元ウィットネスプロトコルを示している。
No time at the end of the tunnel
doi: 10.1038/s42005-018-0049-9
粒子がトンネルするのにかかる厳密な時間は、初等量子力学の最も古い問題の1つであり、まだ解決されていない。本論文では、このトンネリング時間の問題を扱い、トンネルした波束を生成する干渉を破壊しなければ、障壁を通るのに費やされる時間を正確に測定できないことを示している。
Confinement and asymptotic freedom with Cooper pairs
doi: 10.1038/s42005-018-0073-9
標準模型は素粒子物理学の多くの側面を記述するが、クォークをハドロン内に束縛する機構などはいまだに謎のままである。今回著者たちは、超絶縁体のクーパー対との類似性の概要を理論的に記述して、超絶縁体の無限大抵抗の背後にある機構はクォークをハドロン内へ閉じ込める機構と似ていることを実証している。
Experimental data from a quantum computer verifies the generalized Pauli exclusion principle
doi: 10.1038/s42005-019-0110-3
パウリの排他律は、電子の軌道自由度に制約をさらに加える一般化した形で定式化できる。本研究では、こうした制約を、5キュービットの量子コンピューターによって100京分の1の誤差で実験的に検証している。
Single hole spin relaxation probed by fast single-shot latched charge sensing
doi: 10.1038/s42005-019-0113-0
量子計算デバイスに用いるスピンキュービット系の研究は、最近では従来型の単一電子スピンではなく正孔スピンの利用に重点が置かれている。今回著者たちは、GaAsのゲート付き二重量子ドットデバイスを使ったスピンに敏感な新しい電荷ラッチ法を開発して、単一正孔のスピン緩和時間を報告している。
A statistical approach to detect protein complexes at X-ray free electron laser facilities
doi: 10.1038/s42005-018-0092-6
高エネルギーX線による回折実験を用いて、分子構造が高分解能で決定されており、新しい自由電子レーザーによる非結晶性試料の回折実験が行えるようになってきている。今回著者たちは、高分子複合体のフラッシュX線イメージング実験のヒット事象を確認する統計的方法を示し、RNAポリメラーゼのデータで実証している。
Rotating lamellipodium waves in polarizing cells
doi: 10.1038/s42005-018-0075-7
葉状仮足の波は、多数の細胞型で観測される極めて一般的な現象であり、基板に沿って接着し、運動する動物細胞によくある現象である。今回著者たちは、こうした波のダイナミクスを明確に定義された最少のパラメーター一式で再現できることを示すモデルを提示している。
Control of synchronization in models of hydrodynamically coupled motile cilia
doi: 10.1038/s42005-018-0031-6
運動毛は、真核細胞に見られる細胞小器官で、泳ぐのに役立ったり表層流を生じさせる働きをしたりする。本論文では、活発な生物フィラメントの同期状態と拍動運動の間の系統的な関係を示す理論的・実験的研究を提示している。
Spatiotemporal control of cargo delivery performed by programmable self-propelled Janus droplets
doi: 10.1038/s42005-018-0025-4
荷物を特定の目的地まで輸送できる自己推進液滴は、医学への応用に大きな関心が寄せられている。本論文では、泳ぐ液滴を使った1ステップの荷物送達法が報告されている。
Repetitive stretching of giant liposomes utilizing the nematic alignment of confined actin
doi: 10.1038/s42005-018-0019-2
天然の高分子ポリマーを封入する細胞サイズのリポソームは、分子ロボティクスを利用して構築でき、生きている細胞に似た運動が生じる。本論文では、高濃度のアクチンをリポソームに封入すると、リポソームの変形が起こることを示す。
Subpixel three-dimensional laser imaging with a downscaled avalanche photodiode array using code division multiple access
doi: 10.1038/s42005-018-0096-2
スキャナーレス三次元飛行時間デバイスは、地上であるいは宇宙から高品質の画像を生成でき、光検出と測距に関する情報が得られる。著者たちは、パルス符号化した光照射を使ってピクセルを符号化する、小規模のサブピクセル3Dレーザー撮像デバイスを設計し、実証している。
Topological photonic crystal nanocavity laser
doi: 10.1038/s42005-018-0083-7
レーザー発振とフォトニクスへの応用の大半では、存在するレーザー発振モードの数の制御が不可欠である。本研究では、トポロジーが異なる2つのフォトニック結晶間の界面を利用して、近回折限界のモード体積に起因する光-物質相互作用の増強によって、単一モードレーザー発振が確実に起こるようにしている。
Orbital angular momentum dichroism in nanoantennas
doi: 10.1038/s42005-018-0088-2
物質における円偏光に依存する光応答は実験と理論で特性が評価されているが、角運動量の効果はほとんど見逃されてきた。今回著者たちは、実証として積層したナノロッドの数値シミュレーションを使って、光のスピンと軌道角運動量の両方に起因する光応答の定義を定式化している。
Long-lived non-classical correlations towards quantum communication at room temperature
doi: 10.1038/s42005-018-0080-x
量子通信は効率のよい量子ネットワークに依存しており、このネットワークは量子メモリーによって改善されている。本論文では、温かい蒸気セルを使った伝令付き単一光子源に向けた実験の進歩を報告し、室温での量子リピーターの実現可能性を実証している。
Emergence of traveling waves in linear arrays of electromechanical oscillators
doi: 10.1038/s42005-018-0086-4
繊毛などの小規模な生物系では、駆動される振動子アレイ内に自発的に組織化する律動的な運動パターンによって移動が実現される。今回著者たちは、バイアスをかけた電極の間を振動する導電性の球によって、類似した進行波運動が生じ、この運動を用いて荷物の輸送を誘導できることを示している。
Breakdown of diffusivity–entropy scaling in colloidal glass-forming liquids
doi: 10.1038/s42005-018-0081-9
ガラスは、自然界どこにでも存在し、多くの用途があるが、その微視的挙動については未解決問題が多く残っている。今回著者たちは、ガラス形成液体を実験的に調べ、その特性を測定して、ガラス転移における熱力学的エントロピーの役割を浮き彫りにしている。
Clogging and jamming of colloidal monolayers driven across disordered landscapes
doi: 10.1038/s42005-018-0068-6
「速いほど遅い」現象は、個々の物体の速度が速くなると、物体系の平均速度が遅くなることであり、微粒子からヒツジまでさまざまなシナリオを記述するのに利用できる。今回著者たちは、常磁性コロイド系における閉塞とジャミングの効果と、速いほど遅い現象との関係を調べている。
Repetitive stretching of giant liposomes utilizing the nematic alignment of confined actin
doi: 10.1038/s42005-018-0019-2
分子ロボティクスを使って、天然の高分子ポリマーを封入する細胞サイズのリポソームを構築し、生細胞に似た運動を生み出すことができる。本論文では、高濃度のアクチンをリポソームへ封入すると、リポソームが変形することを示している。
On the manifestation of electron-electron interactions in the thermoelectric response of semicrystalline conjugated polymers with low energetic disorder
doi: 10.1038/s42005-018-0016-5
次世代の半導体デバイスを開発するには、シリコン以外の材料の基礎物理をよりよく理解することが重要である。今回著者たちは、高分子系半導体の結晶学的特性に関連する特徴に重点を置くことによって、その電荷輸送特性を記述する理論的方法を開発している。
Colloidal topological insulators
doi: 10.1038/s42005-017-0004-1
トポロジカル絶縁体は、バルクでは電気を通さないが、導電性のエッジ状態を示す。今回の研究では、トポロジカル絶縁体のコロイド版を提示し、基礎となる磁気格子のエッジとコーナーの両方に沿ってコロイドを輸送できるエッジ状態が生じることを実験的に実証している。
Phonon diffraction and dimensionality crossover in phonon-interface scattering
doi: 10.1038/s42005-018-0070-z
粒界は、集まって材料を形成している個々の結晶粒の間の界面であり、材料の物理特性に基本的な役割を果たしている。今回著者たちは、界面のナノスケールの構造を考慮することによって、粒界の影響を強く受ける熱輸送の物理を理解する理論を構築している。
Atomic imprinting into metallic glasses
doi: 10.1038/s42005-018-0076-6
ナノインプリンティングは、金型の表面の特徴をレプリカへ転写できる技術であり、ナノ構造化デバイスの作製に適している。今回著者たちは、SrTiO3単結晶の構造的特徴をバルク金属ガラスでできたレプリカへ原子レベルでインプリントできる方法を報告している。
Anomalous Nernst effect and three-dimensional temperature gradients in magnetic tunnel junctions
doi: 10.1038/s42005-018-0063-y
磁性材料のナノスケールの温度勾配と、それがどのように材料の特性に影響するかを理解することは、その材料の応用の可能性を広げるのに役立ち得る。今回著者たちは、磁気トンネル接合における異常ネルンスト効果を分析し、温度勾配がどのように三次元の熱磁気特性に影響を及ぼすか報告している。
Developing design criteria for organic solar cells using well-absorbing non-fullerene acceptors
doi: 10.1038/s42005-018-0026-3
小分子アクセプターを有する有機太陽電池は、高い効率を実現できる見込みがある。今回著者たちは、数値シミュレーションを使って、ドナー分子と非フラーレン型アクセプター分子の補完的な吸収帯や重なり合う吸収帯が、どのような環境下でより高い効率をもたらすか説明している。
A broadband DLCZ quantum memory in room-temperature atoms
doi: 10.1038/s42005-018-0057-9
量子メモリーは、量子ネットワークや量子コンピューターなどの量子に基づく技術の実現に不可欠である。今回著者たちは、自発ラマン散乱を利用して、室温で作動できる広帯域の量子メモリプロトコルを実証している。
A high-gain and high-fidelity coherent state comparison amplifier
doi: 10.1038/s42005-018-0054-z
雑音のない量子光信号を量子通信デバイスへ容易に適用できるようにするには、こうした信号を伝送する困難な課題を解決する必要がある。今回著者たちは、標準的な部品を使って、雑音の影響を減らしながら量子光信号を増幅する方法を堤示し、品質の高い安全な信号を維持している。
No time at the end of the tunnel
doi: 10.1038/s42005-018-0049-9
粒子がトンネルするのにかかる厳密な時間は、初等量子力学の最も古い問題の1つであり、まだ解決されていない。本論文では、トンネリング時間の問題を扱い、トンネルした波束を生成する干渉を破壊しなければ、障壁を通るのに費やされる時間を正確に測定できないことを示している。
Observing the transition from quantum to classical energy correlations with photon pairs
doi: 10.1038/s42005-018-0027-2
量子エンタングルメントは、量子計測において基本的な役割を果たしている。本論文では、エネルギー相関した光子によって量子相関から古典相関への遷移を制御する方式を提案し、実験的に実現している。
Breakdown in the directional transport of droplets on the peristome of pitcher plants
doi: 10.1038/s42005-018-0038-z
多くの自然表面が水を輸送する仕組みは、数世紀にわたって興味深い研究対象になっている。本論文では、食虫植物の口縁部における液滴の輸送の実験研究と理論研究を提示し、表面と水の両方のマルチスケール構造に依存することを示している。
Control of synchronization in models of hydrodynamically coupled motile cilia
doi: 10.1038/s42005-018-0031-6
運動性繊毛は、真核細胞に見られる細胞小器官であり、泳いだり表面流を生成したりする働きをする。本論文では、活発な生物学的フィラメントの同期状態とビート運動の間の系統的な関連性を示す理論研究と実験研究を提示している。
Spatiotemporal control of cargo delivery performed by programmable self-propelled Janus droplets
doi: 10.1038/s42005-018-0025-4
特定の位置へ荷物を輸送できる自己推進液滴は、医学への応用で大きな興味を引いている。本論文では、泳ぐ液滴を使った1ステップの荷物配送法を報告している。
Repetitive stretching of giant liposomes utilizing the nematic alignment of confined actin
doi: 10.1038/s42005-018-0019-2
分子ロボティクスを用いて、天然高分子を封入した細胞サイズのリポソームを構築し、生体細胞に似た運動を生み出すことができる。本論文では、リポソームに高濃度のアクチンを封入すると、リポソームの変形が生じることを示している。
Dual-wavelength 3D photoacoustic imaging of mammalian cells using a photoswitchable phytochrome reporter protein
doi: 10.1038/s42005-017-0003-2
現在の光音響レポーター遺伝子イメージング法では、多波長励起と複雑な計算法が必要である。本研究では、光スイッチング可能なレポータータンパク質と2波長信号取得を使った簡単な代替実験法を提示している。この方法は、広範囲のin vivo光音響イメージングシステムに適用できる。
Theory of Coulomb drag in spatially inhomogeneous 2D materials
doi: 10.1038/s42005-018-0039-y
低電力エレクトロニクスへの二次元ヘテロ構造体の応用の可能性を高めるには、その層間電子相互作用を理解する必要がある。今回著者たちは、電荷不均一性を取り入れた輸送理論を開発して、2層ヘテロ構造体の実験で観測されたクーロンドラッグの挙動を説明している。
Magnetic field driven nodal topological superconductivity in monolayer transition metal dichalcogenides
doi: 10.1038/s42005-018-0041-4
さまざまな種類の超伝導相が多数存在し、それらの超伝導の背後にはそれぞれ独特な特性と機構がある。今回著者たちは、イジング超伝導体と呼ばれるタイプの超伝導体を調べ、磁場をかけるとノード超伝導相へ駆動できることを実証している。
Tilted vortex cores and superconducting gap anisotropy in 2H-NbSe2
doi: 10.1038/s42005-018-0028-1
化合物2H‐NbSe2は、電子挙動が独特であるため大きな関心が寄せられており、エキゾチックな現象を理解するための原型的な物質になっている。今回著者たちは、磁場を傾斜させることによって、NbSe2表面の電子構造の特徴を、走査型トンネル顕微鏡を使ってより明確に分析できた。
Magnetic fluctuations in single-layer FeSe
doi: 10.1038/s42005-018-0006-7
今回、単層FeSeの常磁性状態の理論研究が報告されている。著者たちは、チェッカーボード状態の周りのスピン揺らぎによって、角度分解光電子分光実験と密度汎関数理論の間の矛盾が説明されることを、スピン螺旋の第一原理計算を使って示している。
Exotic multifractal conductance fluctuations in graphene
doi: 10.1038/s42005-017-0001-4
マルチフラクタル性は、古典系ではいたるところにあるが、量子系ではまれである。今回著者たちは、高移動度単層グラフェン電界効果トランジスターの普遍コンダクタンス揺らぎがマルチフラクタルであり、アンダーソン局在に起因することを実証する観察結果を示している。