Research Highlights バクテリオファージゲノミクスによる抗菌剤の発見 2004年2月1日 Nature Biotechnology 22, 2 doi: 10.1038/nbt932 長年の進化を経て、バクテリオファージは、宿主細菌の代謝系を自身の増殖に利用するため、細胞の重要なプロセスを停止させる特殊なタンパク質を創り出してきた。今回我々は、ファージによる細菌増殖抑制の原理を抗生物質の発見に応用した。Staphylococcus aureusのファージ26種の塩基配列を決定し、S. aureusで発現すると増殖が抑制される新規ポリペプチドファミリー31種類を同定した。細胞側の標的はポリペプチドの一部に関して同定され、宿主のDNA複製および転写機構に不可欠の要素であることが示されたものもある。さらに、S. aureusのヘリカーゼローダーであることが推定されるDnaIとファージ77のORF104という典型的組み合わせがもつ相互作用を利用し、低分子阻害物質をスクリーニングすると、細菌の増殖を抑制しDNA合成を阻害する物質が数種類発見された。地球上にはファージが豊富に存在するため、ファージポリペプチドの増殖抑制作用を化学物質で模倣することによって感染症治療のための新規抗生物質が発見される可能性があることを、本研究の結果は示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る