Article テロメラーゼによるヒト胎児脊髄由来神経前駆細胞の不死化 2004年3月1日 Nature Biotechnology 22, 3 doi: 10.1038/nbt944 中枢神経系(CNS)の系列特異的前駆細胞は有糸分裂能が制限されており、容易には増殖させることができない。我々は、レトロウィルスでヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)を過剰発現させ、ヒト胎児脊髄由来の前駆細胞を不死化させた。塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)存在下で分裂させたhTERT不死化細胞は高いテロメラーゼ活性を示し、グリアまたはニューロンという特定の表現型をもつ分集団を形成した。後者の分集団に含まれる原型系列hSC11V-TERTからはニューロンのみが生成した。そのニューロンには、chx10+介在ニューロンおよびIslet1+/Hb9+/ChAT+運動ニューロンがあり、後者の存在は、Hb9エンハンサーによる緑色蛍光タンパク質(GFP)の誘導で確認された。ニューロンは有糸分裂を終えた状態にあり、電気生理学的活性を有していた。hSC11V-TERT細胞は、ラット胎児脳および損傷を与えた成体脊髄に移植すると、ニューロンとして成熟して6ヵ月間生き続け、腫瘍形成は認められなかった。in vitroでは、正常な核型のまま、複製能が低下することなく168回以上分裂した。このように、hTERTの過剰発現を利用すれば、特定の表現型をもつニューロンの生成が可能な前駆細胞系列を作製することができる。 Full text PDF 目次へ戻る