Review

幹細胞生物学で化学が担う役割

Nature Biotechnology 22, 7 doi: 10.1038/nbt987

心血管疾患、神経変性疾患、筋骨格疾患、糖尿病、およびがんなど、幹細胞による治療がきわめて有望視されている疾患は多い。しかし、治療への有効性が確認される以前に、幹細胞の運命の制御、移植の際の拒否反応、および利用可能な細胞の制約などの問題点を克服する必要がある。そのためには、幹細胞の運命を左右するシグナル経路に関する理解を深めることが必要である。細胞の表現型を利用したシグナル経路特異的な方法による天然物および人工化合物のスクリーニングで、幹細胞の増殖および分化の選択的制御を可能とする低分子が最近多数発見されている。マウス胚性幹細胞からの神経発生および心筋発生、間葉幹細胞からの骨形成、骨格筋細胞の脱分化などがその例である。このような分子は幹細胞生物学の新たな理解をもたらし、究極的には組織の修復および再生に有効な薬物の開発につながる可能性がある。

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