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リン酸化チロシン依存性シグナル伝達ネットワークの定量的プロテオミクスによる時間的解析

Nature Biotechnology 22, 9 doi: 10.1038/nbt1005

リン酸化チロシンによって成長因子刺激の初期段階で行われるシグナル伝達の動態を包括的に研究するため、時間的変化をペプチドの同位体存在比の差に変換する質量分析法を開発した。細胞集団3種類のプロテオームを安定同位体の異なるアルギニンで代謝的に符号化した。異なる時間にわたって各集団を上皮成長因子で刺激し、チロシンリン酸化タンパク質を類縁の結合タンパク質とともにアフィニティ精製した。3通りの方法で生成したアルギニン含有ペプチドを定量し、2実験を組み合わせて5時点の動態プロファイルを得た。既知の上皮成長因子受容体基質のほぼすべてを含むシグナル伝達タンパク質81種類および新たなエフェクター31種類が同定され、上皮成長因子刺激でそれらを活性化したときの経時変化が確認された。活性化プロファイルを総体的に把握することは、細胞シグナル伝達の全貌を知るうえで有益であり、システム生物学的方法によるシグナル伝達ネットワークのモデル化にきわめて重要であろう。

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