Perspective

ジメチルスルホキシドからvorinostatへ:抗がん薬としてのヒストン脱アセチル化酵素阻害薬の開発

Nature Biotechnology 25, 1 doi: 10.1038/nbt1272

ジメチルスルホキシド(DMSO)がなぜ形質転換細胞の増殖阻害および最終分化を引き起こすのかを追究するなかで、我々はヒストン脱アセチル化酵素阻害薬であるスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA;vorinostat(Zolinza))が発見される経路をたどった。SAHAはヒストン脱アセチル化酵素の触媒部位と反応し、これを遮断する。DMSOからSAHAへの経路に関して大規模な構造活性研究を行った。in vitroでも担腫瘍動物でも、SAHAは正常な細胞に毒性を示さない濃度でさまざまな形質転換細胞の増殖阻害および細胞死を引き起こす。アセチル化で構造および機能が変化する多くのタンパク質がSAHAの標的となる。その中には、クロマチンと結合するヒストンや非ヒストン性の遺伝子転写因子、さらに細胞増殖、転移および細胞死の制御に関与するタンパク質が含まれている。臨床試験でSAHAには、患者が十分許容可能な濃度で血液腫瘍および固形腫瘍の双方に強い抗がん活性が認められている。vorinostatに関して米国食品医薬局は、皮膚T細胞リンパ腫治療に対する適応を新たに承認した。さらに強力なSAHAアナログは毒性が許容されるものではなかった。

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