Article

内因性マイクロRNAは組織、系統、および分化状態に応じた導入遺伝子発現の調節に広く利用可能である

Nature Biotechnology 25, 12 doi: 10.1038/nbt1372

我々は以前、マイクロRNA(miRNA)の調節に応答するベクターを用いると造血細胞で導入遺伝子の発現が抑制されることを示した。今回は、導入遺伝子の発現をさらに高度に制御する目的で、その方法の可能性を検討した。miRNAの発現量と標的mRNAの抑制との関係を解析することにより、抑制がmiRNA濃度の閾値に依存することが示唆された。この情報を利用して我々は、miRNAの発現量の変化に応じて導入遺伝子の発現を迅速に調整するベクターを作製した。このベクターは、樹状細胞や造血および胚性幹細胞、さらにはその子孫細胞など、治療上重要な細胞のきわめて近い状態間で導入遺伝子の発現を厳密に区別し、細胞の分化状態に応じた正負の選択を可能にした。さらに、miRNAの標的部位をふたつ組み合わせると、肝臓では導入遺伝子の発現が特定の細胞型に限定された。内因性miRNAの発現および天然の標的の調節に関して、このベクターによる混乱が認められなかったことは注目に値する。miRNAの調節を受けるベクターの特性は、安全性および有効性の優れた治療用途に資するものと考えられる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度