Perspective ヒト胚性幹細胞の培養適応とin vivoの腫瘍形成 2007年2月1日 Nature Biotechnology 25, 2 doi: 10.1038/nbt1285 再生医療でヒト胚性幹細胞(HESC)を分化細胞の供給源として利用するためには、未分化幹細胞を培養液中で長期間継続的に維持することが必要である。しかし、最近HESCの細胞遺伝学的研究では核型異常が見出されており、長い継代期間にわたって染色体が安定しているとは限らない。核型異常が観察されるのは、自己複製する細胞が培養環境に逐次適応していくためと考えられる。細胞の増殖能力を増大させる遺伝子変化は、悪性の形質転換と明らかに類似しており、培養中のHESCにみられるこの変化は、特に精巣胚細胞腫瘍のin vivoの腫瘍発生を反映するものと考えられる。あるHESC株では、均一に染色される染色体領域が形成されることが認められ、これはがん細胞であることをほぼ決定的にする遺伝子の特徴であることから、培養適応と悪性腫瘍との関係がさらに支持されている。このことから、培養適応に重要な遺伝子を特定すれば、in vitroの幹細胞の維持およびin vivoの胚細胞の腫瘍形成の双方にとって鍵となる因子が明らかにされるものと考えられる。 Full text PDF 目次へ戻る