Perspective
家族性自律神経異常症の人工多能性幹細胞を用いる大規模スクリーニングでIKBKAPの発現を回復させる化合物が発見された
Nature Biotechnology 30, 12 doi: 10.1038/nbt.2435
患者特有の人工多能性幹細胞(iPSC)は、ヒトの遺伝疾患をモデル化するための新しい系であり、大規模な創薬スクリーニングのための細胞供給源となる可能性がある。今回我々は、神経堤細胞系列を害する希少な致死的遺伝疾患である家族性自律神経異常症(FD)の患者から樹立したiPSCに由来する神経堤前駆細胞で一次スクリーニングが実施可能であることを示した。我々は、低分子化合物6,912個を試験し、FDの原因遺伝子であるIKBKAPの発現を回復させた8化合物の特徴を明らかにした。そのうちSKF-86466は、細胞内cAMPレベルの調節およびPKA依存性CREBリン酸化によってIKBKAPの転写を誘導することがわかった。SKF-86466は、IKAPタンパク質の発現、および自律神経細胞マーカー発現の疾患特異的喪失も回復させた。今回のデータは、IKBKAPの発現調節にα2アドレナリン受容体活性を結びつけるとともに、iPSCに基づく疾患モデルによる低分子探索によって治療介入に用いられる可能性のある薬物候補物質が発見可能であることを示している。