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Foldit によるタンパク質の設計

Nature Biotechnology 30, 2 doi: 10.1038/nbt.2132-2

Baker研究室は、科学に詳しくない者を多く含む多数のプレーヤーがタンパク質構造問題の解決を競うオンラインゲーム「Foldit」の開発で先駆的な役割を果たしてきた。Folditのプレーヤーは、これまでにタンパク質の折りたたみ、結晶構造モデルの作製、およびアルゴリズムの開発に取り組み、多くの場合で、最新の計算ツールを用いる熟練科学者と同等以上の解を生み出している。
今回、Folditの参加者には、タンパク質の設計に関する一連の問題が与えられた。コンピューターで設計されたDA_20_10は、ディールス・アルダー反応を低速で触媒する酵素であるが、Folditのプレーヤーに与えられたのは、酵素とリガンドとの相互作用の改良をめざす「Cover the ligand」と非構造化ループの安定化を試みる「Back me up」を用いてDA_20_10の触媒活性を高める、という課題である。プレーヤーは、10万種以上の設計を評価する繰り返し作業を通じて、触媒活性がDA_20_10の18倍以上の酵素を作り出した。この成果は、ジエンとジエノフィルのKM値の向上によるもので、kcat値の向上によるものではなかった。以上の結果は、Folditを利用すれば、タンパク質設計の問題解決に十分に適した形で大規模な人間ネットワークの創造力を動員することができることを示唆している。

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