Computational Biology
腫瘍特異的治療法のためのがんネットワークアトラクターへの対処
Nature Biotechnology 30, 9 doi: 10.1038/nbt.2345
細胞はきわめて動的なシグナル伝達ネットワークを利用して生物学的決定プロセスを動かしている。そうしたシグナル伝達ネットワークのかく乱により、細胞のシグナル伝達および表現型はがんネットワークアトラクターと呼ばれる新たな悪性状態に引きつけられ、がんが発生する。その悪性状態に達するまでに蓄積する分子改変はがん細胞の種類によって異なるため、そのメカニズムを明らかにすることはがん生物学の大きな課題である。この課題に取り組むには、システムに基づく新しい戦略により、がんのシグナル伝達ネットワークに固有の特徴をとらえるとともに、遺伝子損傷がそのネットワークをかく乱して疾病の表現型を生ずるプロセスの理解を深めることが必要と考えられる。ネットワーク生物学は、薬剤耐性や転移など、がん治療の重大な障害を回避するのに有用であり、腫瘍特異的ながんの個別化治療を促進すると考えられる。