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遺伝子工学による施肥・雑草防除システムの開発
Nature Biotechnology 30, 9 doi: 10.1038/nbt.2365-2
多くの土壌には、植物を最大限に成長させられるだけのリン酸塩が含まれていない。そのため、リンは、作物の収量増を目的として市販の肥料に配合される必須成分となっている。しかし、リンは再生不能な資源であることから、植物の成長のためにリンを供給するための新たな方法が求められている。還元型のリンである亜リン酸塩は、オルトリン酸塩と比較して水溶性が高いが、植物の成長を阻害するために肥料としては用いられない。López-ArredondoとHerrera-Estrellaは、細菌性亜リン酸塩酸化還元酵素の遺伝子を発現する遺伝子組み換えシロイヌナズナと遺伝子組み換えタバコを作製した。その遺伝子組み換え植物は、亜リン酸塩を唯一のリン源として利用することができ、滅菌土壌と未滅菌土壌に施肥された亜リン酸塩を代謝し、葉面施肥された亜リン酸塩も代謝した。一方、雑草は、亜リン酸塩酸化還元酵素遺伝子を持たないため、亜リン酸塩によって成長が阻害された。この研究で、亜リン酸塩をリン源として利用する形質を導入された植物には、亜リン酸塩が、施肥と雑草防除を同時に行う有望な手段となる可能性が明らかにされた。この方法を採用することで、実際の農業でも再生不能なリンの使用量が削減される可能性がある。