Perspective

シグナルの偏りなく抗原の組み合わせを認識させて組み換えT細胞による選択的な腫瘍の根絶を促進する

Nature Biotechnology 31, 1 doi: 10.1038/nbt.2459

現在のT細胞改変法は、単一の抗原を標的とする抗原特異的なT細胞受容体(TCR)またはキメラ抗原受容体(CAR)を患者のT細胞に形質導入し、それを腫瘍に向かわせるものである。しかし、真に腫瘍特異的な抗原はほとんど同定されておらず、標的抗原を発現する健全な組織がT細胞に攻撃される場合もある。本論文では、真に腫瘍に限定された抗原が存在せずともT細胞に腫瘍特異性を与える方法を紹介する。この方法では、ある抗原が結合することによって準最適な活性化を生ずるCAR、および別の抗原を認識するキメラ共刺激受容体(CCR)を、同時にT細胞に形質導入する。前立腺腫瘍抗原であるPSMAおよびPSCAを用いることにより、同時形質導入を受けたT細胞は、両方の抗原を発現する腫瘍を破壊する一方、どちらか一方の抗原のみを発現する腫瘍には作用しないことが示された。この「腫瘍感知」戦略は、選択的T細胞療法の適用範囲を広げ、一部の副作用を回避するうえでも有用と考えられる。

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