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大動脈・性腺・中腎に似たHOXA+造血血管系へのヒト胚性幹細胞の分化
Nature Biotechnology 34, 11 doi: 10.1038/nbt.3702
ヒト多能性細胞から造血幹細胞を作製することができれば、多くの生物医学的用途が可能になると考えられる。今回、ヒト胚性幹細胞(hESC)由来のスピン胚様体中の造血CD34+細胞は、再増殖能を有するヒト臍帯血CD34+細胞と比較してHOXAの発現が不十分であることが分かり、中胚葉パターン形成の誤りが指摘された。レポーターhESC株を用いて発生中に生じる内皮(SOX17)・造血(RUNX1C)転換を追跡したところ、WNTおよびACTIVINシグナル伝達の同時調節によって得られたCD34+造血細胞はHOXAを発現し、臍帯血細胞との類似性が高いことが示された。その培養物からは大動脈様のSOX17+血管のネットワークが生じ、そこから大動脈・性腺・中腎(AGM)での造血と同様のRUNX1C+血液細胞が出現した。新生CD34+造血細胞とヒトAGMから選別した対応する細胞とは、細胞表面の受容体、シグナル伝達分子、および転写因子の発現が類似していた。我々の知見からは、ヒト造血の重要な初期段階をin vitroで模倣する方法が得られ、それによってhESCからAGM由来の造血系譜が作製される。