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合成AAVベクターが哺乳類内耳への安全で効率的な遺伝子導入を可能にする
Nature Biotechnology 35, 3 doi: 10.1038/nbt.3781
難聴の遺伝子治療を開発する研究は、安全で効率が高く臨床的に意味のある送達手段の欠如によって妨げられてきた。本論文では、合理的に設計された合成ベクターAnc80L65のマウス蝸牛への遺伝子導入に関する安全性および効率を示す。マウス器官型外植片のex vivo遺伝子導入により、一群の他のアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターの中から、Anc80L65が蝸牛細胞標的用の強力なベクターであることが明らかにされた。正円窓膜注射によってマウスの内外有毛細胞の形質導入が高効率で起こり、これは従来のAAVベクターに比べて大きな改善であった。感覚細胞機能、聴力および前庭機能、ならびに免疫学的パラメーターが示すように、Anc80L65の正円窓注射は許容性が高かった。高率で外有毛細胞を標的とするAnc80L65の能力は、複雑な聴覚機能の修復に必要なものであり、聴力および平衡障害に対する将来の遺伝子治療を実現する可能性がある。