遺伝学:ヒトパンゲノムの概要参照配列が初めて発表される
First draft of a human pangenome
doi: 10.1038/s41586-023-05896-x
doi: 10.1038/s41586-023-05896-x
doi: 10.1038/s41587-021-01195-w
ZamecnikとStephensonが1979年にアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)による遺伝子サイレンシングを初めて発表して以来、RNA治療薬には創薬の革新が期待されている。RNA治療薬は、特異性と選択性が極めて高いうえに設計、合成、製造が容易であるため、遺伝子発現を変化させたり転写物のスプライシングやプロセシングを変えたりすることのできる新世代製品の開発が活発に行われるようになった。また、細胞内の標的と結合するRNA・DNAアプタマーや、遺伝子をノックダウンする効果が極めて高い低分子干渉RNA(siRNA)などの新たなRNA治療薬の登場により、創薬研究者は、細胞のRNA調節装置を調整するためのさまざまな手段を自由に利用することができるようになった。マイクロRNA/抗マイクロRNA、合成mRNA、そして最近のシングルガイドRNA誘導型CRISPR-Cas9ゲノム編集などがその例である。
これまでに米国の連邦政府関係機関によって承認されているのは、わずか1種類のアプタマーと4種類のASOだけであり、そのうちのエクソンディス51とスピンラザは、ここ6カ月の間に承認されている。効果を高めて副作用を減らす効率的な化学と新たな疾患部位に対応する送達方法の導入によって商業開発は加速しているが、RNA治療薬がバイオ医薬品業界全体で広く採用されるまでには、あと数年かかる可能性が高い(Editorial, p. 181)。
RNA治療薬の大きな課題は、脂質二重層を越える送達であることが分かっている。高電荷のRNA分子は、エンドサイトーシスによって取り込まれるが、エンドソームから出て細胞質や細胞核にある標的部位へ移動することができず、それが大きな障害となっている(Perspective, p. 222)。RNA分子の化学設計は、基本的な化学原理の理解が深まり、それを利用して安定性、特異性、輸送、取り込みの問題が克服されることにより、有効性と安全性の改善に向けて大きな進歩を遂げている(Review, p. 238)。
N-アセチルガラクトサミン複合体が導入されて、ASOもsiRNAも肝臓を標的とすることができるようになったが、数多くの組織と応用先では今なお送達が障害となっている。それでも研究は急速に進展しており、現時点では、脳脊髄液への髄腔内送達によって中枢神経系での治療応用が一定範囲まで広がっている(Review, p. 249)。送達効率の向上にはRNA薬の取り込みに寄与する細胞装置の十分な理解が不可欠であるが、そうした過程の理解は進んでおらず、Crookeらの論文では、このことがASOに関して論じられている(Perspective, p. 230)。
ASOとアプタマーはいずれも実用化された製品が存在するが、バイオ医薬品業界は、今もsiRNA薬の承認を待望している。現在、2種類のsiRNAオリゴヌクレオチドの後期臨床試験が行われており、アルナイラム社(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ)のトランスサイレチン型アミロイドーシス薬「パチシラン」に関する極めて重要な試験結果が、2017年の半ばに発表される予定である(News Feature, p. 198)。
合成mRNAを治療薬として用いる可能性は実証されていないが、RNAワクチンの可能性に対する関心は高まっている。病原体や腫瘍のゲノム塩基配列を利用して注射可能なRNAワクチンを開発するという構想は魅力的であるが、抗原探索、製剤、送達といった極めて困難な課題が解決されていない(News Feature, p. 193)。
doi: 10.1038/nbt.3829
doi: 10.1038/nbt.3812
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doi: 10.1038/nbt.3779
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doi: 10.1038/nbt0317-183
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doi: 10.1038/nbt0317-191
doi: 10.1038/nbt0317-192
doi: 10.1038/nbt.3808
doi: 10.1038/nbt.3815
doi: 10.1038/nbt.3817
doi: 10.1038/nbt.3814
doi: 10.1038/nbt.3801
doi: 10.1038/nbt.3796
doi: 10.1038/nbt.3781