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Palantirによる単一細胞データの細胞運命決定確率の評価
Nature Biotechnology 37, 4 doi: 10.1038/s41587-019-0068-4
分化系の単一細胞RNA塩基配列解読研究から、分化と細胞運命の両者の性質は不連続的なのか連続的なのかという基本的な疑問が生じている。本論文では、細胞運命を確率的過程として扱うことで分化中の細胞のたどる経路をモデル化し、エントロピーを利用してその経路に沿って細胞の可塑性を評価するアルゴリズム、Palantirについて示す。Palantirは、細胞の高分解能な擬似時間的順序付けを行い、それぞれの細胞状態に対してそれぞれの最終状態に分化する確率を割り当てる。我々は、このアルゴリズムをヒト骨髄単一細胞RNA塩基配列解読データに用いて、造血分化の重要な目印を検出した。Palantirの分解能によって、系譜の運命選択を促進して細胞が可塑性を失う時期を厳密に示す重要な転写因子の特定が可能となる。Palantirは、分化中の細胞系譜の識別および遺伝子発現傾向の再現において既存のアルゴリズムよりも優れていること、さまざまな組織への一般化が可能であること、あまり研究されていない分化系の解明に適していることが示された。