単一細胞RNA塩基配列解読の時系列データから集団の動態を推定する

最近の単一細胞RNA塩基配列解読研究から、発生中の細胞は、トランスクリプトームの連続的経路を非同期的にたどることが示唆されている。しかし、スナップショット実験では、経路に沿った細胞フラックスの観察結果は集団のサイズ効果と混同され、そのため解釈するのが難しい。特に、増殖率と死滅率の変化は細胞フラックスと取り違えられやすい。本論文では、単一細胞の時系列データから推測される発生経路の基礎となる概念と集団の動態を折り合わせる数学的枠組み、シュードダイナミクス（pseudodynamics）を紹介する。シュードダイナミクスは、経路全体の集団分布の変化をモデル化し、選択圧、集団の拡大、および発生能を定量化する。このモデルをT細胞および膵β細胞成熟の時間分解単一細胞RNA塩基配列解読に用いることにより、増殖率とアポトーシス率が評価され、重要な発生チェックポイントが明らかになった。これは既存の方法では得られないデータである。