Article
BiTEを分泌するCAR-T細胞は検出可能な毒性を生じずに抗原逃避を回避する
Nature Biotechnology 37, 9 doi: 10.1038/s41587-019-0192-1
固形腫瘍のキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法は、標的抗原の発現が不均一であったり、単一抗原に反応するCAR-T細胞の標的となる抗原を持たない腫瘍が増殖したりすることによる制約を受けている。今回、神経膠芽腫特異的腫瘍抗原であるEGFRvIIIに特異的なCAR、および神経膠芽腫で過剰発現することが多いが正常組織でも発現する抗原EGFRに対する二重特異性T細胞誘導抗体(BiTE)の発現を行わせるバイシストロン性構築物を開発した。CART.BiTE細胞はEGFR特異的BiTEを分泌し、それがCAR-T細胞の標的を振り替えるとともに、野生型EGFRに対する非形質導入バイスタンダーT細胞の動員を行った。EGFRvIII特異的CAR-T細胞は、EGFRvIII発現が不均一な腫瘍を完全に治療することができず、EGFRvIII陰性でEGFR陽性の神経膠芽腫の増殖を生じた。しかしCART.BiTE細胞は、神経膠芽腫のマウスモデルで不均一な腫瘍を消滅させた。CART.BiTE細胞を頭蓋内に導入すると、BiTE-EGFRは局所的に有効であったが、全身では検出されなかった。EGFR特異的CAR-T細胞とは異なり、CART.BiTE細胞は、in vivoのヒト皮膚移植片に対する毒性を生じなかった。