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送達の課題:治療用ゲノム編集の期待を実現する

Nature Biotechnology 38, 7 doi: 10.1038/s41587-020-0565-5

ゲノム編集は、多種多様な不治の単一遺伝子疾患や多因子疾患を治療する可能性がある。特に、塩基配列特異的ヌクレアーゼ技術の進歩は、疾病の原因遺伝子のノックアウトや内因性の変異遺伝子の修復に基づく治療的ゲノム編集戦略の開発を劇的に加速させた。こうした技術は、ヒトでの臨床試験に進んでいる。しかし、ゲノム編集による治療の可能性が完全に現実のものとなるまでには、課題が残されている。今日までのゲノム編集の成功には、タンパク質や核酸の送達の分野で過去20年ほどの間に運よく開発されてきた送達技術が極めて重要であった。遺伝子治療用のアデノ随伴ウイルスベクターとレンチウイルスベクター、核酸やタンパク質を送達するための脂質ナノ粒子や他の非ウイルスベクターなどがその例である。しかし、こうした媒体は効率と組織選択能力をさらに改良しなければならない。また、ゲノム編集酵素自体も最適化の必要があり、その編集効率、特異性、および免疫原性に関する課題を解決しなければならない。タンパク質工学と合成化学の新たな手法は解決策をもたらし、安全で効果的な臨床ゲノム編集の開発を可能とするだろう。

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