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正常体温で3日間ex situ保存したヒト肝臓の移植
Nature Biotechnology 40, 11 doi: 10.1038/s41587-022-01354-7
現在の臓器保存方法では、ヒト臓器移植用のドナー移植片の評価、輸送、および埋植を行うための時間枠が限られている(通常は12時間未満)。本論文では、あらゆる施設で不要とされたヒト肝臓の移植を行ったことを発表する。そうした臓器は、数日にわたってex situの正常体温機械灌流で保存される可能性がある。今回移植された肝臓は正常な機能を示し、再灌流障害が最小限であり、免疫抑制療法の必要性もごく限定的であった。患者は正常なQOLを速やかに回復し、1年間の追跡では、拒絶や胆管損傷などの肝損傷の兆候が全く認められなかった。今回の初めての臨床的成功は臨床研究の新たな地平を開くものであり、ドナー臓器の有効性評価のための時間枠を最長10日間延長するのみならず、極めて困難な緊急手術を待機的処置に変えることが期待される。