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三重特異性DARPinのエンソビベプはさまざまなSARS-CoV-2変異株を阻害する
Nature Biotechnology 40, 12 doi: 10.1038/s41587-022-01382-3
既存薬への抵抗性を有する可能性がある重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)変異株の出現により、幅広い変異株活性を有する新たな治療方式の必要性が鮮明になっている。本研究では、三重特異性DARPin(designed ankyrin repeat protein)の臨床候補であるエンソビベプ(ensovibep)が、SARS-CoV-2の三量体スパイクタンパク質の3ユニットに結合してACE2の結合を強力に阻害できることを、クライオ電子顕微鏡分析によって明らかにした。協調的結合とDARPinの3モジュールの相補性により、エンソビベプはオミクロン株の亜系統BA.1およびBA.2をはじめとする一般的なSARS-CoV-2変異株を阻害することができた。SARS-CoV-2に感染させたロボロフスキーハムスターでは、標準治療であるモノクローナル抗体(mAb)カクテルと同様に、エンソビベプでも致命率が低下した。in vitroのウイルス継代実験で単剤として用いた場合、エンソビベプは前述のmAbカクテルと同様にエスケープ変異の出現を抑制した。以上の結果は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の幅広い変異株に対する既存の標的療法に代わる治療薬として、エンソビベプの臨床評価を進めることを支持している。