Article

Ras変異株がんはマウスでV型ATPアーゼの低分子阻害に対する感受性を示す

Nature Biotechnology 40, 12 doi: 10.1038/s41587-022-01386-z

Rasファミリータンパク質の変異はヒトのがんの33%に関与しているが、Ras変異株の直接的な薬理学的阻害は今なお容易でない。直接的阻害に代わる方法として、我々はRas変異株細胞の感受性のスクリーニングを行い、249CがさまざまなRas変異株がんに対してナノモルの効力を持つRas変異株選択的な細胞毒性物質であることを発見した。249Cはナノモルの親和性で液胞型(V)ATPアーゼに結合してその活性を阻害し、リソソームの酸性化を妨げ、複数のRas誘導性がんが生残を依存するオートファジーおよびマクロピノサイトーシスの経路を阻害した。意外なことに、249Cの効力はRasドライバー変異の種類によって変動し、in vitroでもin vivoでもKRASG13DおよびKRASG12Vへの効力が最も高かったことから、マクロピノサイトーシスおよびリソソームpHへの変異株特異的な依存が明らかになった。実際に、249CはKRAS誘導性の肺がんおよび結腸がんのマウス異種移植片で、有害な副作用を生じずに腫瘍の増殖を強力に阻害した。異なるKRAS変異を持つ同質遺伝子系統のSW48異種移植片を比較したところ、KRASG13D/+変異(次いでG12V/+)で249C治療への感受性が特に高いことが確認された。以上のデータから、KRASG13DやKRASG12Vといった特定のKRAS変異を要因とするがんでV-ATPアーゼを標的にすることに関して、概念実証が成立した。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度