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フルダラビンはマウスでヌクレアーゼを用いないAAVおよびCRISPR/Cas9による相同組換えを増強する

Nature Biotechnology 40, 8 doi: 10.1038/s41587-022-01240-2

ヌクレアーゼを用いないアデノ随伴ウイルスによる相同組換え(AAV-HR)に基づく遺伝子治療は、従来の遺伝子治療に比べていくつかの利点があり、特に導入遺伝子の永続的な発現が期待されている。しかし、AAV-HRの効率が低いことは依然として大きな制約である。今回我々は、一連の低分子化合物の試験を行い、リボヌクレオチド還元酵素(RNR)阻害剤が、マウスおよびヒトの肝細胞株のAAV-HRの効率を明確に約3倍向上させることを見いだした。RNR阻害剤であるフルダラビンの短期投与は、マウスの肝臓において、明白な毒性を引き起こすことなく、非ヌクレアーゼおよびCRISPR/Cas9によるAAV-HRのin vivo効率を2〜7倍向上させた。フルダラビンの投与は、増殖期と静止期の両方の肝細胞において、一過性のDNA損傷シグナル伝達を誘導した。注目すべきは、フルダラビン処理マウスと対照マウスのいずれでも、AAV-HR事象の大多数が非増殖性の肝細胞で起こっていたことである。これらのデータは、分裂期にない肝細胞での一過的なDNA修復シグナル伝達の誘発がマウスでのAAV-HR効率の向上を生じたことを示唆している。以上の結果は、臨床承認済みのRNR阻害剤の使用でAAV-HRに基づくゲノム編集治療が強化されることを示唆している。

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