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タンパク質分解誘導によるA型インフルエンザ弱毒化生ワクチンの作製
Nature Biotechnology 40, 9 doi: 10.1038/s41587-022-01381-4
弱毒化生ウイルスワクチンの有用性には、至適でない免疫原性や安全上の懸念、煩雑な製造の工程および技術による限界がある。本論文では、タンパク質分解誘導キメラ技術(proteolysis-targeting chimeric;PROTAC)による宿主細胞の内因性ユビキチン・プロテアソーム系を介したウイルスタンパク質の分解を利用してA型インフルエンザウイルスの弱毒化生ワクチンを作製したことを発表する。我々は、ウイルス生産用に改変した安定的な細胞株でA型インフルエンザウイルスのゲノムを改変して条件的に除去されうるプロテアソーム標的化ドメインを導入し、十分な感染力を持ち感染すると宿主のタンパク質分解装置によって生きたまま弱毒化されるPROTACウイルスを作製した。PROTACウイルスはマウスおよびフェレットのモデルで高度に弱毒化され、同種および異種のウイルスへの曝露に対して強力な広域の液性免疫、粘膜免疫、および細胞性免疫を誘導することができた。PROTACによるウイルスの弱毒化は、弱毒化生ワクチンの作製に広く応用可能と考えられる。