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人工疑似心外膜の単一細胞ゲノミクスが心臓の発生と疾患におけるヒト心外膜の生物学的本質を明らかにする
Nature Biotechnology 41, 12 doi: 10.1038/s41587-023-01718-7
心外膜は、脊椎動物の心臓を覆う中皮で、胚発生中には複数の心臓細胞系譜の起源となり、心筋層の成長と修復に不可欠なシグナルを発する。今回我々は、左心室壁に特有の心外膜および心筋層のレチノイン酸依存的な形態的、分子的、機能的パターン形成を示す、ヒト多能性幹細胞由来の自己組織化する人工疑似心外膜(epicardioid)を作製した。系譜追跡、単一細胞トランスクリプトミクス、クロマチン接近可能性プロファイリングを組み合わせることで、人工疑似心外膜が持つ異なる細胞系譜の運命指定過程と分化過程を明らかにし、ヒト胎児の発生と転写および形態レベルで比較した。続いて、人工疑似心外膜を用いて心臓の細胞タイプ間の機能的クロストークを調べ、ヒトの心臓発生でIGF2/IGF1Rシグナル伝達とNRP2シグナル伝達が担う役割に関する新たな知見を得た。さらに、人工疑似心外膜が先天性またはストレス誘発性の心肥大と繊維化の多細胞的な病因を再現することを示した。このように、人工疑似心外膜は心臓の発生、疾患、再生における心外膜の働きを研究するための優れた基盤となる。