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遺伝子操作を行った生細菌がマウス肺の緑膿菌感染を抑制して気管内チューブのバイオフィルムを溶解させる
Nature Biotechnology 41, 8 doi: 10.1038/s41587-022-01584-9
全世界で大きな死因の1つとなっている肺感染症には、遺伝子を操作した生細菌が新たな様式の治療法になる可能性がある。本研究では、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)のバイオフィルムを伴った場合の院内死亡率が高い人工呼吸器関連肺炎の治療を目的に、ゲノムが縮小した肺炎マイコプラズマ(Mycoplasma pneumoniae)を作製した。我々は、肺炎マイコプラズマの弱毒化シャーシのバイオセーフティーをマウスで確認した後、その染色体にトランスポジションで外来遺伝子を4つ導入し、殺菌とバイオフィルム分解の機能を組み込んだ。この遺伝子操作株は、急性緑膿菌肺感染症に対する高い有効性がマウスモデルで示された。また、この遺伝子操作株は、人工呼吸器関連肺炎患者の気管内チューブに形成されたバイオフィルムを溶解し、ペプチドグリカン層を標的とする抗生物質と併用すると、グラム陽性細菌とグラム陰性細菌に対する有効性が高まることも明らかになった。今回得られた肺炎マイコプラズマの遺伝子操作株は、気道のバイオフィルム関連感染症の治療を可能にすることが期待される。