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抗菌CRISPR–Casを有する改変ファージがマウスの大腸菌量を選択的に減少させる
Nature Biotechnology 42, 2 doi: 10.1038/s41587-023-01759-y
抗生物質治療はマイクロバイオームに悪影響を及ぼし、抗生物質耐性をもたらす。今回、臨床的に重要な各種大腸菌(Escherichia coli)に対するファージ療法を開発する目的で、162種類の野生型(WT)ファージのライブラリーでスクリーニングを行った結果、幅広い大腸菌をカバーし、細菌表面の受容体に相補的に結合し、挿入されたカーゴを安定的に保持することができるものが8種類見いだされた。選択されたファージは尾繊維とCRISPR–Cas機構を改変し、大腸菌を特異的に標的とするようにした。改変ファージはバイオフィルム中の細菌を標的とし、ファージ耐性大腸菌の出現を抑制し、共培養実験で祖先のWTファージよりも優れていることが示された。相補性の高い4種類のファージを組み合わせると(SNIPR001)、忍容性はマウスモデルとミニブタの両方で良好で、マウス腸の大腸菌量はSNIPR001の個々の成分ファージよりも大きく減少した。SNIPR001は、血液がん患者で致死性の感染症を引き起こすこともある大腸菌を選択的に殺す方法として、臨床開発中である。