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広範な体細胞変異のin vivoモデルとなるプライムエディターマウス
Nature Biotechnology 42, 3 doi: 10.1038/s41587-023-01783-y
遺伝子操作を行ったマウスモデルは、ヒトのがんの要因となる遺伝子損傷のごく一部分を捉えているにすぎない。現在のCRISPR–Cas9モデルは、その範囲を拡大することができるが、エラーを起こしやすいDNA修復に依存しているため限界がある。今回我々は、マウスの生殖細胞系列にCre誘導性のプライムエディターをコードさせることによって、in vivoプライム編集系を開発した。このモデルでは、薬剤耐性に関連し臨床的に重要なKras変異や、膵がんに多く見られるTrp53ホットスポット変異など、初代組織由来の細胞株やオルガノイドのさまざまな変異を迅速かつ正確に操作することができる。この系により、脂質ナノ粒子を用いたin vivoの体細胞プライム編集を実際に行い、ウイルスによるプライム編集ガイドRNAの送達やプライム編集オルガノイドの同所移植によって肺がんや膵がんをモデル化した。この方法は、従来のモデルでは構築することが困難ながん関連変異や複雑な遺伝子の組み合わせに関する機能研究を加速させるものと期待される。