Perspective
インフレ抑制法を受けたメディケアの薬価交渉と新薬の研究開発
Nature Biotechnology 42, 3 doi: 10.1038/s41587-023-02096-w
米国のインフレ抑制法(IRA)はメディケア(米国の高齢者向け医療保険制度)に対し、支出額の大きな一部の医薬品について価格引き下げ交渉を行うことを求めている。我々は、公共および権利者の情報源の過去データを用いてIRAの交渉基準を遡及的に当てはめることにより、2012~2021年に適格基準を満たした全薬剤を洗い出し、2022年に交渉価格の適用が見込まれた医薬品の選別と、それに伴う業界の減収額の算出を行った。得られた結果から、IRAによる業界全体の減収が大きくはなく、売上高が最上位の医薬品の大部分には影響が及ばないこと、そして研究開発費の大幅な減少にはつながらない見込みであることが示唆された。医薬品開発プロジェクトの純現在価値の変化は、メディケアが重要な買い手である医薬品や、期待収益と開発コストの比がIRA以前に辛うじてプラスであった医薬品に集中すると考えられる。メディケアの交渉範囲の縮小または拡大を検討する政策立案者は、特徴の異なる医薬品の間の折り合いを慎重に検討するべきである。