ROR1はcavin-1とcaveolin-1の足場として働きカベオラと生存シグナルを維持する
ROR1 sustains caveolae and survival signalling as a scaffold of cavin-1 and caveolin-1
2016年1月4日 Nature Communications 7 : 10060 doi: 10.1038/ncomms10060
ROR1(receptor tyrosine kinase-like orphan receptor 1)は肺腺がんにおいて、リネジ生存がん遺伝子NKX2-1/TTF-1の直接的な下流として生存促進性シグナルを維持する。本研究では、この受容体型チロシンキナーゼ(RTK)が予期せぬ機能をもち、カベオラの2つの必須の構造的構成要素cavin-1とcaveolin-1(CAV1)の足場として働いていることを報告する。このROR1のキナーゼ非依存的機能は、細胞膜においてcavin-1とCAV1の相互作用を促すことで、CAV1のリソソームでの分解を妨げる。その結果として、カベオラ構造と複数のRTKを介したAKTへの生存促進性シグナルが維持される。METやIGF-IRなどの多様なRTKを介した迂回シグナルによって生じるEGFRチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)耐性が、現在、臨床的に大きな障害となっているが、今回の発見は、ROR1の阻害によってこの耐性を打開できる機序を示している。ROR1はがんと胎生期で発現することを考えると、肺腺がん患者においてROR1のcavin-1とCAV1の足場としての機能を阻害することは、この深刻ながんの治療を改善するための魅力的な方法である。
Tomoya Yamaguchi, Can Lu, Lisa Ida, Kiyoshi Yanagisawa, Jiro Usukura, Jinglei Cheng, Naoe Hotta, Yukako Shimada, Hisanori Isomura, Motoshi Suzuki, Toyoshi Fujimoto & Takashi Takahashi