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  • クロマチンの動きをクライオ電顕で解く

    ヒト細胞中のDNAは、ヒストンタンパク質の芯に何重にも巻かれたクロマチンとして存在する。転写や組換えといった反応が起こるとき、酵素はどうやってDNAに近づき、それに働き掛けるのだろうか。この仕組みの解明一筋に研究を進め、近年次々と成果を上げている、東京大学の胡桃坂仁志教授に話を聞いた。

    2024年12月号

  • 大腸菌由来の「DNAを組換える転移因子」を発見

    東京大学先端科学技術研究センターの西増弘志教授らは、「IS110ファミリー」の転移因子を解析し、これらがRNAを用いてDNAを組換える特殊なタイプのものであることを見いだした1,2。将来的にこのシステムを応用することで、人工的に「ターゲットDNAの塩基配列」を変更でき、一度に数万塩基対をゲノム編集できるようになるかもしれない。

    2024年11月号

  • 光合成進化の謎に迫る、新規の光合成細菌を同定!

    約40億年前に誕生したとされる生命。繁栄に至ったカギは、光合成細菌の出現にある。海洋研究開発機構(JAMSTEC)超先鋭研究開発部門のジャクソン・マコト・ツジ博士は、未知の光合成細菌の探索と解析を進め、新規の光合成細菌を発見。今まで見落とされてきた光化学系進化の重要な知見を見いだした。一連の成果は、光合成細菌研究に新たな局面をもたらしている。

    2024年8月号

  • 老化を制御する時代へ

    老化の研究が面白くなってきている。細胞の老化がどのように個体の老化を引き起こすのか。長らく謎だったその仕組みが徐々に明らかになってきた。老化細胞の除去薬の開発や老化に果たす免疫の役割など、注目すべき研究成果を次々に発表してきた東京大学医科学研究所の中西真教授と金沢大学の城村由和教授(当時、中西研究室助教)に話を訊いた。

    2024年6月号

  • タコにもレム睡眠に似た睡眠段階があることを解明!

    ヒトを含む哺乳類には、眠りが浅く、覚醒状態に似た脳波を示すレム睡眠と、眠りが深いノンレム睡眠がある。 沖縄科学技術大学院大学(OIST)の真野智之博士、清水一道博士(当時)らの研究チームは、タコを対象に行動学・電気生理学・解剖学手法、人工知能(AI)を用いた体表模様の画像解析などを用いて、タコにも2段階からなる睡眠があり、そのうちの「動的睡眠」がレム睡眠に似ていることを突き止めた。

    2024年2月号

  • 脳のタウ異常蓄積を脳脊髄液で検知し、原発性タウオパチーを鑑別

    生前に確定診断できるタウオパチー(脳内にタウタンパク質が異常蓄積する疾患)は現在、遺伝性のものと、アミロイドβタンパク質の異常蓄積を特徴とするアルツハイマー病のみだ。ワシントン大学医学部の佐藤千尋氏と堀江勘太氏らは、この疾患のバイオマーカーを求め、 脳と脳脊髄液中のタウ種について、相関関係を詳細に解析。脳脊髄液中の特定のタウ種が、原発性タウオパチーの指標となり得ることを見いだした。

    2023年8月号

  • 胎児の造血幹細胞は血液をほとんど作らない!

    血液細胞は、造血幹細胞が細胞分裂を繰り返すことで作られると考えられている。横溝智雅・熊本大学特任助教(現在、東京女子医科大学講師)らは、全ての血液細胞の源であるはずの造血幹細胞が、胎児でどのように発生し、造血が行われているかをマウスで詳しく調べて、驚いた。胎児の血液細胞の大部分は、造血幹細胞から作られていなかったのだ。

    2023年7月号

  • ヒトリンパ節単一細胞アトラスで見えた悪性リンパ腫の細胞間相互作用

    がん細胞は、周囲の非腫瘍細胞を変化させて、血管新生や免疫回避に利用している。血液がんの一種で、悪性リンパ腫では2番目に多いとされる「濾胞性リンパ腫」について、リンパ節内の非血液細胞を単一細胞レベルで解析した坂田麻実子・筑波大学教授らは、3種類に大別されていたそれらが、合計30のサブタイプに分けられることを突き止めた。サブタイプの中には、これまで全く知られていなかった特徴を持つものや、予後を推定するバイオマーカーとして使える可能性があるものが含まれていた。

    2023年5月号

  • がん診断に応用可能な高性能DNAコンピューター

    DNAを含んだ溶液の化学反応を通して計算を行うDNAコンピューター。奥村周氏(当時東京大学大学院博士課程に所属)らは、機械学習で用いられるニューラルネットワークをDNAコンピューターで構築し、塩基配列や酵素を調整した大量のマイクロ液滴中で計算を実行させることでその全体像を視覚的に捉える手法を開発した。このDNAコンピューターは、がんのmiRNAに基づく診断技術にも応用できるという。

    2023年4月号

  • 加齢で表皮幹細胞の機能が低下する訳

    生体組織の幹細胞は、自己増殖しつつ、分化した細胞を作り出すが、その機能は加齢とともに衰えていき、表皮幹細胞も例外ではない。京都大学医生物学研究所の一條遼助教と豊島文子教授らは、表皮幹細胞の加齢変容を調べる中で、表皮下の真皮が加齢に伴い硬化することを発見。表皮幹細胞がどのように真皮の硬化を感知して加齢変容するかを明らかにしたばかりか、「真皮はなぜ硬化するのか」という問いから、傷の治癒を促す手掛かりをも突き止めた。

    2023年3月号

  • 奈良墨に着目した高大連携チーム、煤生成の通説を覆す発見

    地域の特産品である「奈良墨」への興味から、煤(すす)の生成過程について調べ、煤生成の通説を覆す発見をした、奈良県立奈良高等学校の廉明徳さんと久米祥子さん。京都大学の学生たちとの「高大連携」プロジェクトではあるものの、研究テーマの決定から実験、論文執筆、査読付き国際誌上での発表までやり遂げた2人と、指導に当たった同校の仲野純章教諭に、研究成果と高大連携について聞いた。

    2023年1月号

  • 遺伝統計学でヒトゲノムデータと医療・創薬をつなぐ

    近年、大規模なヒトゲノム研究から、医療や創薬にとって有用な情報が得られ始めている。このような研究を進めるには、大量のヒトゲノムデータを解析する必要があり、それを可能にしているのが、遺伝統計学である。遺伝統計学とは何か、遺伝情報からどんなことが分かるのか? 日本の遺伝統計学を牽引する、岡田随象・東京大学大学院教授に話を聞いた。

    2022年12月号

  • 100年以上謎に包まれていた4億年前の脊椎動物の正体

    しっかりした背骨があるものの、歯がなく鰭(ひれ)もない、わずか5cmの魚。1世紀以上前から数千体の化石が発見されていたパレオスポンディルスは、奇妙な形態故に、どの脊椎動物の仲間か謎のままだった。その頭骨の化石を精密に解析した平沢達矢・東京大学大学院理学系研究科准教授らは、この魚が「魚類から陸上脊椎動物への移行段階」に位置する動物であると突き止めた。

    2022年10月号

  • RNAの可逆的なリン酸化修飾を発見

    遺伝子を基にタンパク質を合成する過程において、アミノ酸を運ぶ転移RNA(tRNA)。その機能を調節する「RNAの可逆的なリン酸化」という新たな種類の修飾が、鈴木 勉・東京大学教授が率いる研究グループにより発見された。tRNAがリン酸化修飾されると、タンパク質合成の耐熱性が大きく向上することから、RNAのリン酸化修飾は、RNA医薬などへの応用も期待される。

    2022年9月号

  • 腫瘍へ確実に送達可能な生菌カプセル化システムを構築

    1世紀にわたり模索が続く、生菌を使ったがん治療。生菌製剤の免疫系回避と腫瘍部位への送達が課題である。コロンビア大学 博士課程6年に在籍する張本哲弘さんらは、このほど、菌体を包む莢膜多糖(CAP)を合成生物学の手法で自在にスイッチングする技術を開発。CAPの制御で、薬剤を兼ねる生菌をより多く腫瘍に送達できることを、生体で実証した。

    2022年7月号

  • 運転技術とマナーを兼ね備えたAI、『グランツーリスモSPORT』で勝利

    PlayStation®4︎の自動車レースゲーム『グランツーリスモSPORT』。新たに開発された人工知能(AI)が、このゲームの世界チャンピオンに勝利した。レースで勝つには、リアルタイムに車両を制御していく能力に加え、対戦相手に敬意を払って運転するマナーを学ぶ必要もあった。このAIの研究開発メンバーの1人、河本献太氏(株式会社ソニーAI)に話を聞いた。

    2022年6月号

  • ニューロン間の情報伝達は「押す力」でも引き起こされる!

    ニューロンの樹状突起には「スパイン」と呼ばれる出っ張り構造が多数あり、スパイン頭部は長期記憶の形成に際して増大することが知られている。この現象を見いだし、スパインの可塑性と機能について研究を続けてきた河西春郎・東京大学国際高等研究所ニューロインテリジェンス国際研究機構特任教授は、このほど、スパインの頭部増大で生じた圧力が軸索側のシナプス前部を押すことで、ニューロン間の情報伝達が行われることを突き止めた。

    2022年5月号

  • 百寿者の腸内細菌の特徴から見えた、長寿の秘訣

    百歳以上の人たちの腸内細菌を調べる研究が行われ、長生きの秘密の1つが見つかった。百寿者の腸内細菌は、肝臓の分泌物である胆汁酸を代謝して、病原体に対し強い抗菌作用を示す物質を作り出していることが明らかになったのだ。宿主は腸内細菌により、感染症から守られていたわけだ。この研究を率いた本田賢也・慶應義塾大学教授に話を聞いた。

    2022年4月号

  • 小中学校の休校に感染抑止効果は確認できず

    2020年春、政府は新型コロナウイルスの感染拡大を食い止める目的で、全国の小中高校を一斉休校とするよう市区町村に要請を出した。休校は、子どもたちに学習不足や運動不足などの悪影響を及ぼしただけでなく、親が休職を余儀なくされた家庭では、経済状況にも影響が及んだ。福元健太郎・学習院大学法学部教授は、自身の子どもの休校体験から「多くの犠牲をもたらした休校に、感染拡大の抑制効果はあったのか」と疑問に思い、公的なデータを用いて「休校にした自治体」と「開校にした自治体」の新規感染者数を比べ、「休校による感染抑止効果は認められない」との結果を得た。

    2022年2月号

  • スキルス胃がんの全ゲノム解析で見えた治療標的

    スキルス胃がんは進行が早く、発見されたときには手遅れのことが多い。それ故、研究用の検体を得るのが難しく、治療法の開発も遅れていた。今回、患者の腹水に含まれる細胞を用いることで、スキルス胃がんの網羅的ゲノム解析が初めて行われ、治療標的を見つけることに成功した。研究を行った国立がん研究センター研究所の間野博行所長と佐々木博己研究員に話を聞いた。

    2022年1月号