2014年3月号Volume 11 Number 3
外部刺激でも体細胞を幹細胞化できる!
体細胞を外部刺激だけで受精卵に近い状態へとリセットできることが示され、この方法で初期化された細胞は「STAP細胞」と名付けられた。STAP細胞をマウスの胚盤胞(卵割腔が形成された着床直前の胚)に注入して得られたキメラマウスでは、STAP細胞が全身のみならず胎盤にも分化していることが観察された。この能力はES細胞とiPS細胞にはないため、STAP細胞は独特な多能性状態をとることが示唆される。初期化の概念が大きく変わる発見であり、詳細な機構解明が待ち望まれる。
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外部刺激でも体細胞を幹細胞化できる!
NPGよりお知らせ
Nature 2014年1月 30 日号641〜647ページ、および676〜680ページに掲載された小保方晴子氏ら(理化学研究所ほか)による論文 2 報について、論文中にいくつかの致命的な誤りがあることを理由に論文撤回の要請があり、弊社はそれを受理いたしました。
撤回理由は、Nature 2014年7月3日号112ページ、および下記URLをご覧ください(ウェブページが最新情報になります)。Natureダイジェスト 2014年3月号2〜3ページでも、これらの論文に基づいた記事を掲載しておりました。
STAP 関連論文、撤回理由書
Retraction: Stimulus-triggered fate conversion of somatic cells into pluripotencyRetraction: Bidirectional developmental potential in reprogrammed cells with acquired pluripotency
強く圧迫したり、酸性溶液に浸けたりするだけの手軽な方法で、 体細胞を受精卵に近い状態へとリセットできることが明らかになった。
鳥のV字編隊飛行は、やはり合理的だった!
渡り鳥の群れが、驚異的ともいえる巧みな飛行制御能力で省エネ飛行を成し遂げていることが明らかになった。
軟骨魚類に骨がない理由
今回、軟骨魚類として初めて、ゾウギンザメの全ゲノム塩基配列が解読され、脊椎動物の初期進化を知るための重要な手掛かりが得られた。
ピロリ菌株との相性が胃がんの発症を左右する
地域的な起源が異なるピロリ菌株に感染している場合に、胃がんが発症しやすくなることが明らかになった。
イタリア警察を動かしたゲル画像不正検出技術
世界中の科学文献の画像をチェックする新しい技術により、イタリアの著名ながん研究者の多数の論文に不正な画像操作の形跡が見つかった。この研究者は現在、警察の捜査を受けている。
作物収量アップのカギは内生菌?
遺伝子組換えや育種によらずに作物を強化する方法として、植物の組織内に共生する真菌類の能力が評価され始めている。
ゲノミクス創成期のお宝を探して
ゲノミクス創成期に活躍した解析装置の多くが、現在、時代遅れの不用品として廃棄されようとしている。世界の科学博物館が結束して、こうした装置の収集に向けて動き出した。
リンネのゾウ標本をめぐる物語(上)
分類学の父と呼ばれるリンネが「アジアゾウ」の分類の基準とした アルコール漬けの標本は本当にアジアゾウなのか?この疑問が、最先端のプロテオミクスによって、300年の時を経て解明された。顛末を、Nature PodcastチームのEwen Callawayが過去と現在を織り交ぜながら詳しく掘り下げた。
News Feature
医療用アイソトープが不足する!
世界の原子炉の老朽化により、近い将来、医療用アイソトープは深刻な供給不足に陥ると考えられている。それに備え、原子炉を使わない医療用アイソトープ製造法を模索している革新的な企業がある。
Japanese Author
アポトーシスは 脳の形作りに必須だった!
多細胞生物には、細胞が自ら死に向かう「アポトーシス」が備わっている。特に発生過程では、アポトーシスが厳密に実行されることで、特定の大きさ、機能、形を持つ組織や臓器が作られる。このほど、東京大学大学院薬学系研究科の三浦正幸教授と山口良文助教らは、アポトーシスが、脳の発生を次の段階に進めるスイッチであることを初めて実証した。
News & Views
マウス脳で超高速エンドサイトーシスを発見
脳機能を支える重要なプロセスである神経接合部の小胞エンドサイトーシスに、超高速モードがあることが明らかになり、長年使われてきたエンドサイトーシスのモデルを再評価する必要がでてきた。
News Scan
iPS細胞をしのぐ万能性を確認
理研など日米チームが体細胞を酸の刺激で効率的に初期化することに成功
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