2015年10月号Volume 12 Number 10
オルガノイドの興隆
100年以上前から細胞には自己組織化能力があることが知られていたが、その能力が培養法に用いられだしたのは、わずか十年ほど前の2000年代半ばだ。培養皿の中にシグナル分子を投入するだけで、細胞は自分で組織を形作り、臓器に似た立体構造体「オルガノイド」となる。このミニ臓器は、基礎研究や薬の試験で役立つことが実証されつつあり、さらには、移植などの治療に用いるための研究も進められている。
Editorial
News
タコのゲノムから、高知能の秘密に迫る
高い知能や、抜きん出た擬態能力で知られるタコ。その全ゲノム情報が解読され、ゲノムサイズがヒト並みに大きいことや、姿にたがわず独特な機構がいくつも備わっていることが明らかになった。
世界初、4本の足を持つヘビの化石を発見
ブラジルで発見された「4 本足の抱きつきヘビ」が、ヘビ進化論を根底から揺るがす。
フィラエが見て、触れて、嗅いだもの
彗星着陸機フィラエが2014年11月に送信してきたデータの分析結果が初めて報告された。7カ月の休眠を経て2015年6月に目を覚ましたフィラエだが、その後再び通信は途絶えており、状況は厳しいとされる。しかし、その貴重なデータからは新たに多くの謎が生まれている。
ペンタクォークをLHCで発見
5個のクォークからなる短命で風変わりな粒子「ペンタクォーク」が、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)での実験で発見された。ペンタクォークは、かつて日本の研究グループが発見したと報告したものの、その後の実験でその存在が否定されていた。
現代人の体質や病にネアンデルタールDNAの影
現生人類は、旧人種との性交渉でアフリカ外の環境に対処する能力を獲得した。そして、私たちに残る旧人種のDNAは今も、喘息や皮膚病、さらにはうつ病に至るまで、さまざまな形で影響を及ぼしていることが分かってきた。
アルツハイマー病の治療薬開発で初の成果
アミロイドβを標的とした抗体医薬で病の進行を30%遅らせたというささやかだが確かな成果に、研究者たちは勇気づけられている。
大うつ病の遺伝子マーカー見つかる!
うつ病と関連する特定のゲノム塩基配列の探索は、これまで望み薄と考えられていたが、今回、大うつ病と強固な関連性を示す遺伝子が見つかった。この発見で、精神病に関係した遺伝子の捜索が熱を帯びそうだ。
SETIに舞い込んだ思いがけない幸運
ロシアの億万長者Yuri Milnerが地球外知的生命体探査(SETI)プロジェクトに1億ドルを贈った。
News Feature
オルガノイドの興隆
臓器に似た立体構造体「オルガノイド」を作る研究が熱を帯びている。培養皿の中にシグナル分子を投入するだけで、細胞が自分で組織を形作るのだ。こうしてできたミニ臓器は、単一細胞の分析よりも多くの情報をもたらす場合があるだけでなく、薬の効果や副作用を調べるのにも役立つことが分かってきた。
Comment
追悼・南部陽一郎博士
現代素粒子物理学を予見した理論家
Japanese Author
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小胞体も核も選択的オートファジーの対象だった!
次々と出る良好な実験データ─「うまくいきすぎて、怖いくらいでした」と、持田 啓佑・大学院生は研究を振り返る。オートファジーは、細胞内の大規模分解システム。世界中で激しい研究競争が繰り広げられているこの分野で、細胞の小胞体に加え、核のオートファジーの仕組みをも明らかにすることに、わずか2年ほどで成功したのだ。
News & Views
微生物の「眼」はどうやってできたのか
ワルノヴィア科渦鞭毛藻類という微生物は、細胞内に眼のような構造体「オセロイド」を持っている。分析の結果、オセロイドの部品は色素体とミトコンドリアを由来とすることが明らかになった。
白内障の原因を解きほぐすラノステロール
遺伝性白内障の2家系における研究から、疾患の原因が、水晶体のラノステロールを合成する酵素の機能を障害する変異遺伝子であることが分かった。この知見は、白内障の非外科的予防や治療につながりそうだ。
News Scan
しつこいライム病
5人に1人は抗生物質による治療後も症状が消えない休眠状態の「生残菌」が原因かも
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