Research Highlights
シャチの狩りでは閉経後の雌がリーダーに
シャチ(Orcinus orca;写真)の雌は、閉経を迎えた後、狩りの専門知識を分かち合うことで血縁個体の生存を助けていることが、北米太平洋岸に生息する「レジデント(定住型)」のシャチ集団についての研究で明らかになった。
シャチの雌は40代で仔を産まなくなるが、その後も40年以上生き、中には90歳を超える個体もいる。一方、雄は50歳を超えることはほとんどない。雌が生殖可能な年齢を過ぎても長く生きていることが知られている動物は、シャチの他に、別のクジラ類であるコビレゴンドウとヒトのみである。
今回、エクセター大学(英国)のDarren Croftのチームは、2001~2009年に北米の太平洋沿岸沖で撮影された、レジデントのシャチの計750時間以上に及ぶビデオ映像を解析した。すると、91歳を最高齢とする102頭のシャチの観察から、主要な食物源であるサケ類を群れで狩る際に、閉経後の雌が群れを率いる傾向があることが明らかになった。このリーダーシップは特に、サケ類の個体数が少なく、狩りが困難な年に顕著だった。
Croftらによると、今回の結果は、閉経後の雌が生態的なノウハウの提供源になることを直接的に示した初めての証拠だという。
Curr. Biol. http://doi.org/2mx (2015)
翻訳:船田晶子
Nature ダイジェスト Vol. 12 No. 6
DOI: 10.1038/ndigest.2015.150613