2016年4月号Volume 13 Number 4
品質保証ブームを巻き起こせ!
ビジネス業界では、きちんとした製品やサービスが流通するように、ISOなどの国際機関が世界共通の標準や規格を制定しており、それを守らなければ取引が成立しない場合がある。一方、学術研究の場では、サンプル保存やデータ管理の方法が研究室ごとに違っていたり、試薬の保管条件や使用期限を守っている人とそうでない人がいたりする。こうした日々の実験過程を是正して「信用できるデータ」を生成しようと、品質保証部門を設ける大学や、外部の品質保証コンサルタントと提携する研究者が増えつつあるが、まだ少数だ。原因は、時間や費用がかかると思われていることにある。
Free access
Nature 関連誌に3つの新ジャーナル
Free access
「私」とNature:その存在に気付いたのが、私だけだった理由
カーボンナノチューブ(CNT)は、炭素の平面シートがぐるりと管状に丸まった物質(太さ数nm、長さ数μm)。1991年11月7日号のNature に発表され、世界の研究者を驚かせた。発見者は飯島澄男・名城大学終身教授。電子材料や構造材料として優れた性質を持っており、現在、実用化に向けた研究が精力的に進められている。
Editorial
News
重力波を初めて直接検出
重力波は、時空の歪みが波として伝わる現象だ。この重力波を直接検出することに、米国を中心とする国際的な観測計画が初めて成功した。2つのブラックホールの合体で生じたとみられる重力波を捉えた。アインシュタインの予言が100年を経て確かめられ、天文学は重力波を通して宇宙を見る新たな時代に入った。
「マイクロプラスチック」がカキの生殖系に及ぼす影響
プラスチックの微粒子「マイクロプラスチック」を体内に取り込んだカキは、生殖能力が低下することが実験で示された。プラスチックによる海洋生態系の破壊について、懸念がますます高まっている。
老化細胞を除去したマウスは長生き
老化した細胞を標的にすれば加齢関連疾患を治療できる可能性があることが、マウスを使った鮮やかな実験により証明された。
汗をリアルタイムで分析できるウエアラブルセンサー
腕に装着した状態で汗成分が分析でき、その結果をスマートフォンに送信できる、小型で曲げることも可能なプラスチックセンサーが開発された。
フランスの臨床試験で死者
問題の薬剤の構造についての情報が極めて少なく、この臨床試験で何が起こったか、いまだに見えてこない。
太陽系に未知の巨大惑星発見か
太陽系外縁天体の軌道の分析から、太陽系外縁部に太陽の周りを2万年かけて1周する大質量天体が存在する可能性が出てきた。この分析結果を発表したのは、太陽系外縁天体をいくつも発見してきた天文学者だ。
ホーキング博士の新論文に割れる物理学界
ブラックホールに「エネルギーがゼロに近いソフトな粒子」があるなら「ブラックホール情報パラドックス」という難問が解決され得るとする論文がarXivに投稿され、論争が起きている。
メジナ虫症の根絶を阻むのはイヌ?
体長80cmもの糸状虫が皮下を這い激痛を伴うメジナ虫症。根絶まであと少しという段階で、意外な伏兵が現れた。
犬のDNAからヒトの精神疾患の手掛かりを得る
犬の遺伝子データと飼い主による犬の行動評価とを結び付けることで、ヒトの疾患と関連する遺伝子を見つけ出そうというプロジェクトが始まった。
Free access
遺伝子組換え作物の危険性を指摘する論文に不正疑惑
遺伝子組換え反対派のウェブサイトなどで広く引用されている論文数本に、不正な画像改変などが見つかった。そのうちの1本はすでに取り下げられている。
News Feature
品質保証ブームを巻き起こせ!
ラボでの日々の実験に「品質保証」を取り入れてほしい。お金と時間を費やしてでも積極的に取り組む価値がある。それを知ってもらおうと奮闘している研究者がいる。
Japanese Author
Free access
ボトムアップ法が拓くナノカーボン科学の新局面
1985年のフラーレン発見以来、ナノチューブやグラフェンなどのいわゆるナノカーボン類は社会に多大なインパクトをもたらしてきた。ナノカーボン類は現在、レーザー照射などでグラファイトを蒸発・凝結させるといった「トップダウン型」の手法で合成されることがほとんどだが、近年、ナノカーボン構造を有機合成の手法で構築する「ボトムアップ型合成」の研究が盛んになっており、この手法に関する総説がNature Reviews Materials 創刊号に掲載された。著者である名古屋大学の伊丹健一郎教授、瀬川泰知特任准教授、伊藤英人講師のお三方に、有機合成で作ることの意義と現状、今後の展望について伺った。
News & Views
地球は「大凍結」を辛うじて逃れている
日射量と二酸化炭素濃度の関係から氷期の開始時期を予測する計算式が導かれ、完新世の地球が新たな氷期への突入を辛うじて逃れていることが裏付けられた。このままいくと、今後 5万年間は氷期に入りそうもないという。
オフターゲット効果が最小のCas9酵素
特定のDNA配列を切断するゲノム編集技術CRISPRで利用されている酵素Cas9は、標的外(オフターゲット)の部位も切断することが知られている。このほど、タンパク質工学を利用して、オフターゲット効果が最小のCas9が作製された。
News Scan
大丈夫か、標本の名称表示
博物館に保管された標本の多くに間違った名前が付けられている。
逆張りの心不全治療法
心臓のリズムを一時的に乱すと有益な場合もある ようだ。
Advertisement