2023年11月号Volume 20 Number 11
新しいタンパク質が食卓へ
一般に、豊かになるほど食肉の需要は増える。中国では、その傾向が特に顕著で、食肉消費量は1960年の約15倍に激増している。食肉をそれほど大量に摂取することは、動物、人類、地球に圧力をかけることになる。こうしたことから、ラボや工場で生産されるタンパク質が食生活に広がっていくかもしれない。有力候補は、昆虫パウダーや、細菌が作ったタンパク質などだ。
Editorial
Research Highlights
リサーチハイライト
「脳細胞のエネルギー発電所からマウスのストレスを予想する」、「荒っぽい運転が地球に優しくない理由」、「オールドスパイス:カレーの尽きせぬ魅力を物語る遺物」、「鳥の羽毛の色を数える」、他。
News in Focus
地球史上最も重い動物だった可能性のある原始的なクジラ
ペルーで、驚くほど大きくて重い骨の化石が発見され、記録破りとなるかもしれない始新世の巨大な海生動物の存在が明らかになった。
若齢マウスの血中タンパク質が老化した脳の機能を回復させる
抗老化効果が期待できる血液成分のリストに血小板第4因子(PF4)が加わった。
胚とは何か?科学者たちは定義の変更を求める
胎児に成長できる可能性のある実験室で作られた構造体も、胚として定義され、規制されるようになるかもしれない。
気候変動訴訟を勝利に導いた弁護士、ジュリア・オルソン氏インタビュー
2023年8月14日、米国モンタナ州の法廷で、気候変動への対策を訴える若き活動家たちが歴史的な大勝利を収めた。
抗肥満薬は心臓病も防ぐ — 今後の展開は?
肥満症治療薬セマグルチドは、心臓発作などの心血管疾患の発生リスクを低減することが示唆された。
対話型AIが主要な学術文献データベースにも
学術文献データベースScopus、Dimensions、Web of Scienceにも対話型AI検索が導入され始めている。
脳の活動から単語を想起して音声に変換
神経の麻痺で声が出せない人たちの会話を支援する、神経信号を音声に変換する技術が開発されている。この技術を大幅に改善したという、2つの研究が報告された。
Features
新しいタンパク質が食卓へ
ラボや工場で生産されるタンパク質が、食生活に広がっていくかもしれない。 有力候補は、昆虫パウダーや、細菌が作ったタンパク質などだ。
銀河系のニュートリノ地図を初公表
銀河系内から地球に届く高エネルギーのニュートリノを、南極点の氷床の中に埋設された巨大な観測施設が10年間にわたって観測し、その分布を示す地図が初めて公表された。
EUのヒト脳プロジェクトの顛末
2013年に始まったヒト脳プロジェクトが2023年9月に終了した。コンピューター上に脳を再現することを目指した野心的なプロジェクトの成果と初期の混乱をNatureが検証する。
かみ合わないAI規制のビジョン
中国、EU、米国はAIの規制に向けて動き出しているが、それぞれのアプローチは異なっている。
News & Views
偏食の根底にある免疫学
ヒトはしばしば食べ物を好き嫌いする。そうした摂食行動の1つに、食物アレルギーに関連した食物嫌悪がある。今回、この反応の免疫学的根拠がマウスで明らかにされ、神経系と免疫系の結び付きが担う役割が示された。
AIがドローンレースでチャンピオンに勝利
自律ドローンが人間のドローンレースチャンピオンと対戦し、勝利した。この勝利は、巧みなエンジニアリングと、主に試行錯誤から学ぶタイプの人工知能によるものである。
ハエは磁気を感知するのか
ショウジョウバエは地球の磁場を感知でき、磁気感覚という謎めいた感覚を調べるのに理想的なモデル生物だと長い間考えられてきた。しかし、これまでに行われた重要な研究を厳密に再試験したところ、この考え方を裏付けることはできなかった。
Advances
万物は蒸発する
ブラックホールが最終的に蒸発するようにすべては同様に蒸発するのかもしれない。
Where I Work
Fernanda Avelar Santos
Fernanda Avelar Santosは、2023年3月パラナ連邦大学(ブラジル・クリティバ) 地質学博士課程修了